全部で177ヶ所あるSAPAの情報更新の作業を、すべて中央で管理するのは無理なので、CMSとしてブログを導入したというのがひとつです。もうひとつは、個々のSAPAが自由に更新できるようにすることで、個性化を図っていきたいという目的もあります。
eNEXCOドライブプラザは高速道路の事故・渋滞の交通情報から、料金検索、サービスエリアやパーキングエリア(以下、SAPA)の飲食店案内・ショップガイドまで、幅広い情報を扱う高速道路のポータルサイトだ。
中央集権でなく個々に裁量を持たせる
かつての日本道路公団が2005年の10月に民営化され、愛称が「JH」から「NEXCO」となり、東・中・西日本の3つに分割された。このeNEXCOドライブプラザを運営するのは、その中のNEXCO東日本だ。eNEXCOドライブプラザの中でMovable Typeが使われているのは"サービスエリア・パーキングエリア情報"のページだ。
事業開発部開発グループ 沓抜さん、木村さんにお話を伺った。
"サービスエリア・パーキングエリア情報"の部分をブログにした理由は2つ。
「全部で177ヶ所あるSAPAの情報更新の作業を、すべて中央で管理するのは無理なので、CMSとしてブログを導入したというのがひとつです。もうひとつは、個々のSAPAが自由に更新できるようにすることで、個性化を図っていきたいという目的もあります」
SAPAの運営はこれまで道路公団が直接行ってきたわけではなく、関連の財団法人が行ってきた領域だ。それが民営化され、NEXCO(高速道路会社及び100%出資会社含む)が直接管轄することになった。SAPAの運営はNEXCOの主要な事業領域のひとつとなり、今後収益を上げていかなくてはならない場のひとつとなったのだ。
「これまでSAPAは"どこでも同じサービスが受けられる"ということを前提に運営されていたんです。ですが、民営化とともにお客様により満足してご利用いただくということになると、地元の名物を楽しめたり充実したお土産を販売するなどして、もっと個性をアピールしていくことが必要になります。そのためにも中央一括の体制ではなく、個別に情報提供するという戦略を打ち出すことにしたんです」
正直、これまでのSAPAは単なるドライブ中の休憩のためのスペースというイメージが強かった。しかし、民営化後は、各SAPAのレベルアップが図られると共に、それぞれ特徴のあるサービスが行われるようになった。もはやどこも同じサービスではなく、切磋琢磨が行われるようになってきているのだ。
実際、SAPAの個性化も既に始まっており、角川クロスメディアとのタイアップで発行されているフリーペーパー「Highway Walker」 には、SAPAの美味しいレストラン情報が並んでいる。SAPAブログもこういった情報を発信する場として、今後充実化が図られていくのだという。
段階を踏んでブログの数を拡大
ブログを使い、個々のSAPAのアピール競争を促すというアイデアはよいが、177ヶ所のSAPAで実際にブログを始めさせるというのは、そう簡単な話ではない。現在はその第一段階として、高坂や上里など、主要な9ヶ所(2007年1月末)のSAPAでブログが稼動している状況だ。
実際にこの"SAPAブログ"で上がっているエントリーをのぞいてみると、SAPA独自のイベントやレストランの独自メニュー、またレストランの前の樹木にイルミネーションが点灯したなど、ちょっとしたニュース記事が挙げられている。
SAPAブログのエントリーには、イベントやレストラン情報が掲載されている
「内容に関しては今のところは担当者に自由に書いてもらってます。サービスを始める前にブログの使い方に関する説明会を開いて、マニュアルも作成しました。それにテスト期間を設けて、エントリー投稿の試験も行いました。9ヶ所を選んだときも意欲的なSAPAの担当者を選んだので、ブログについてよく理解されている担当者の方が多いので、特に問題はありませんでした」
ブログのエントリーを書いているのは、SAPAで実際に働いているスタッフたち。通常の業務の合間などにブログを更新するのだという。ブログの更新を担当するのは店長とは限らず、若い好奇心のあるスタッフが担当するケースも少なくないようだ。
「とりあえず最初の9ヶ所のブログが稼動したので、次の段階としてさらに数を増やす予定です。ただ、177ヶ所すべてにブログを持たせるかどうかはまだ検討段階です。中身は個々の裁量に任せてはいますが、野放し状態になっても困りますので、ある程度の管理ができる状態は必要です。なので様子を見ながら段階的に増やしていくつもりです」
eNEXCOドライブプラザもSAPAブログもまだ始まったばかり。それ以前に、民営化以後のSAPAの変化を知らない人も多いはずだ。高速道路で旅行する前には「どこのSAPAで何を食べることができるのか」をネットで調べてから出かける、ということが常識になるのは、そんな先のことではないはずだ。
お話を伺った沓抜さん、木村さん(左から)
事例データ
・Movable Type(ホスティングライセンス)
・サイトを公開したのは:2006年10月31日
・はじめた理由:SAPAの独自情報を発信するため。
・制作を担当したのは:ソフトバンク・テクノロジー
・何か手応えはありましたか?:個々のSAPAからイベント等の情報が上がるようになった。