利用するのが本部の人間だけではなく、店舗スタッフも含まれるというのも考慮しました。ブログに比べて他のツールは、とっつきづらさがあると思ったのです。
ファーストリテイリングでは、国内にあるユニクロの全店長が一堂に集まる「店長コンベンション」という会議を年に2回開いている。2006年3月に開かれた店長コンベンションでは、約700人の店長が集まり、その席上で「社内情報ウェブ」が紹介された。
社内情報ウェブとは、社内ブログを利用するシステムで、店舗で得られる「お客さまの反応」などの情報を本部に伝えるためのもの。これらの情報を収集し、整理することで、さまざまな活用が可能になる。
全国にまたがる店舗の「現場の声」をイントラブログで吸い上げる
約700の店舗は、東京都千代田区にあるユニクロの本部とイントラネットで接続されており、社内情報ウェブは、このイントラネットの中で利用できるようになっている。以前から各店舗には2台のパソコンが配備されており、店長や店舗スタッフが業務に利用していた。社内情報ウェブには、各店舗に配備されたパソコン以外にも、スタッフが所有している携帯電話からもアクセスできる。
ブログのエントリーを書くのは本部の担当者で、「本部から店舗への質問」という形をとる。店舗側は、本部から送られてきた質問のエントリーに対し、コメントとして回答を送る。コメントの回答は、アルバイトスタッフも原則として自由に書き込むことができる。
本部から店舗への質問には、例えば「チラシについて」がある。新聞の折り込みチラシは、従来は本部のスタッフが主導して作成しており、店舗の意見を聞くことはなかった。ところが、社内情報ウェブを使って、作成中のチラシを見せて意見を募るようにしたところ、より効果の高いチラシが作れるようになった。これもブログの成果だ。
社内情報ウェブは、Movable Typeを大幅にカスタマイズして構築された。そのため、画面の見た目は、通常のブログとはちょっと違う。どちらかというと、グループウェアに似ている。
「社内情報ウェブ」の画面
ブログの"わかりやすさ"
店舗からスムーズに情報を集めるためにどのような工夫をしたのか、ファーストリテイリング・グループのシステム企画部に所属する森真太郎さんに話を聞いた。例えば、店舗からいろいろな意見が出たときに、「今回はこれでいきます」と本部から「結論」を提示する機能を、Movable Typeをカスタマイズすることで付けた。
「電子掲示板だと、みんなが意見を言いたいだけいって、収拾がつかなくなることがあります。そんな無責任なことにならないよう、"結論"を示すようにしました」(森さん)
このほかにも、当初はトラックバックを利用可能にしていたが、あとからオフにした。店舗スタッフにはなじみがなかったので、思い切って機能を省いたのだという。また、運用開始したばかりのころは、店舗から上がってくる情報もさまざまだった。本来、別ルートで報告するはずのクレーム情報を書き込む人もいたという。そこで、ブログはクレームを書くところではなく質問に答える場であることを本部が店舗に指導した結果、きちんと有益な情報が集まるようになったという。約700店から意見を吸い上げるという画期的なシステムも、初めから完成していたのではなく、試行錯誤しながら作られていったようだ。
そもそも、ブログを選んだのも、店舗で働くアルバイトのスタッフでも気軽に使えるようにという狙いがあった。
「利用するのが本部の人間だけではなく、店舗スタッフも含まれるというのも考慮しました。ブログに比べて他のツールは、とっつきづらさがあると思ったのです」(森さん)
店舗のような実際にお客さまと接する現場から情報を集め、活用したいと考える企業は多い。ユニクロの事例は、そのためにブログの"わかりやすさ"が貢献できることを示している。
「社内情報ウェブ」では、お客さまの声など現場の声を投稿できる
事例データ
・Movable Type基本ライセンスパック
・ブログを導入したのは:2006年3月
・はじめた理由:店舗からの情報収集と情報共有
・制作を担当したのは:株式会社スカイアークシステム
・何か手ごたえはありましたか?:お客さまの反応など、店頭からのリアルな情報を集めることができるようになった