美容師・介護福祉士・インストラクターを育成する専門学校「三幸学園」は、現在全国7都市に26の学校を展開し、それぞれ独自に運営を行っている。ただ、Movable Typeを使ったウェブサイトは、本部で一元管理されているという。複数個の更新頻度の高いサイト運営をどのようにコントロールしているのだろうか。
サイトの導入、運営を手がけるデジパ株式会社 クリエイティブ事業部マネージャーの橋口元徳さんに話を伺った。
Movable Typeで運用フローの改善とコスト削減を実現
三幸学園のサイト運営をデジパで本格的に請け負うようになったのは2年ほど前のこと、当時はすべての学校のサイトを通常の静的HTMLで作成していた。
「最初は問題なかったのですが、運営しているうちに学校の数が増え、そのたびに新サイトを立ち上げていたので、サイト間のコンテンツの差異が目立つようになってきました。また、すべての更新作業を学園の東京本部を通した形で対応していたので、だんだん負荷が高まり更新フローがうまくまわらなくなってきたのです」
これを解消するためにMovable Typeの導入を提案したのが2006年の1月ごろ。サイトのリニューアル作業が完了したのは2006年の5月だ。
このタイミングでリニューアルを行ったのは、例年4月に作成される学校案内パンフレットの内容を反映する必要があったからだ。同時にコンテンツの精査も行い、統一フォーマットで22個の学校のサイトが一気に作成された。
サイトの構造
このサイトは一つの学校につき4~5個のブログ、合計で約100ものブログで構成されている。26校は「医療秘書福祉専門学校」、「リゾート&スポーツ専門学校」、「ビューティーアート専門学校」「こども専門学校」の4種類に分類されており、このうち「こども専門学校」を除く22校にMovable Typeが導入され、それぞれ共通のデザインテンプレートを利用している。
ただし、グループのトップページおよび「学校一覧」や「学校概要」といった全校共通のページのみ、ブログではなく静的なHTMLで作成されている。
トップページ下部には、すべての学校の最新エントリーをRSSで取得して表示する「お知らせ」欄が用意されている。
系列校の一つ「札幌医療秘書福祉専門学校」のページ。全体がMovable Typeで構築されている
運用フロー
Movable Type導入後の感触はどうだったのだろうか?
「リニューアル後、すべての学校にその旨アナウンスを流しました。ブログ化することで伝えたい情報をすぐにサイトにアップすることができるということで、各校からかなりの好評をいただきました。今までは情報発信に消極的だった学校も、やりたいことがどんどん出てきたようで、積極的に更新されるようになりました」
だが、好評にもかかわらず思わぬ弊害が発生したようだ。
「ところが問題が出てきたのです。各校のウェブ担当者の数やスキルのばらつきから、更新頻度が多い学校と少ない学校、そして情報の質にかなりの差が出てきてしまいました」
特に人手の少ない地方の学校では更新作業を生徒にまかせてしまうところもあり、クオリティーコントロールが難しい状況になったため、リニューアルして1~2ヶ月後、更新フローを変更したそうだ。
「各校による更新を禁止して、一度東京の本部を通す形にしました。このことによってクオリティーコントロールもきちんとできるようになり、現在は安定して運用できています」
一見リニューアル前のフローに戻ってしまったようにも聞こえるが、すべての作業でHTMLを修正していた以前に比べ、大幅に効率化が図れているとのことだ。
Movable Typeを選んだ理由
このように、三幸学園でMovable Typeを導入した大きな理由は更新フローの改善だ。では数多くあるCMSツールの中からMovable Typeを導入した理由はどこにあるのだろうか?
「一番大きな理由はやはりコスト面ですね。便利なCMSツールは確かにありましたが、やはりMovable Typeのライセンス体系は魅力でした。また、Movable Typeを部分的に使用したサイト構築の経験はありましたが、大規模サイトでの導入事例はまだなかったため、試してみたいという気持ちもありました」
また、三幸学園からは運用面だけではなく、SEO的な要望もあったようだ。
「以前のサイトでもSEOは大きな課題でした。いろいろ対策を講じてはいたのですが頭打ちになってしまい、Movable Type導入を起爆剤にしたいという意識はありましたし、実際そのような提案もしました」
導入後検索順位は飛躍的に上がり、その試みは成功したそうだ。
「一年前と比べるとウェブに割り振られる予算も大幅に上がりました。紙媒体であるパンフレットが、広報部予算の大部分を占めてはいますが、確実に意識が変わってきていることを感じます。また、学校単位で新たにブログを立ち上げたいという話もあがってきています」
Movable Type導入によって、統括している本部だけではなく、各学校のサイト担当者のモチベーションも上がってきたという。
このようにMovable Typeを使って多数の学校のサイトをクオリティーを保ちつつ効率的に運営する三幸学園の事例は、他の業種にも応用できるのではないだろうか。
お話を伺った株式会社デジパの橋口元徳さん
事例データ
・Movable Type基本ライセンスパック
・サイトを公開したのは:2006年5月
・はじめた理由:更新フローの改善
・制作を担当したのは:デジパ株式会社
・何か手ごたえはありましたか?:各校の情報発信に対するモチベーションが飛躍的に高まった