情報検索技術やグリッド技術を得意とする開発ベンダー、ビジネスサーチテクノロジ株式会社(以下BST)は、同社の主力商品である全文検索エンジン「WiSE」を利用して、Movable Typeに高度な全文検索機能を追加するブログ検索パッケージ「WiSE MT」を2006年4月にリリースした。
自社製品を使って、蓄積した情報や経験を製品に反映する
BSTでは、取引先へのパッケージ導入はもちろん、社内でも「WiSE MT」を利用してカスタマイズしたMovable Type Enterpriseをイントラブログとして運用しているという。
「WiSE MT」の開発理由について同社開発本部製品企画部マネージャの吉田龍一さんは語る。
「そもそものきっかけは、2006年の初めにMovable Typeを利用しているお客様から、弊社の検索技術(WiSE)とブログを組み合わせてブログ内検索システムを構築できないか、という相談を受けたことですね。そこでさっそく社内サーバにMovable Type Enterpriseをインストールして検証を始めました」
「WiSE MT」開発のために導入されたMovable Type Enterpriseだが、最初からイントラブログとしての活用も視野に入っていたそうだ。
「まずは社内で使ってみようということで、有志5、6人で始めました。ブログの内容は、営業報告を上げたり、新聞記事のクリッピングをしたりと、人によってばらばらでしたね」
Movable Type Enterpriseで作成されたイントラブログのページ。新着情報を表示するなど工夫を凝らしている
ブログ内の全文検索が可能になり、アクセス数がアップ
最初は、デフォルト状態で使用していたイントラブログだが、ほどなく同社の検索技術を活用し「BST Blog Search」と呼ばれるブログ検索ポータル画面が開発された。
「WiSE MT」を使用したこの画面では、社内で運用しているすべてのブログのエントリー、コメント、添付ファイルなどがクロールされ、全文検索が行える。
この機能が追加されてから、社内のブログアクセス数がかなり増えたという。
「私は調査報告書や見積書など、気付いたものは全部エントリーとして投稿しているのですが、検索結果には添付されたPDFファイルの内容なども含まれるので、社内で簡単にノウハウの共有ができるようになっています。グループウェアが苦手とする文書管理という側面から見ても、ブログは優れていると思います」
と話すのは、営業本部SE部の岩田健治さん。社内情報共有ツールとして、検索機能を強化したブログは一定の効果を上げているようだ。
ブログと検索エンジンの相性
個人でブログを書いている人も多いが、他にも部署やタスク単位でもブログを作成し、活用しているという。
「Movable TypeはUIが優れているので、技術者でなくともトレーニングなしで使えるというのもいいですね。まだまだ全社員がブログを書くまでには至っていませんが、現在のところは他の部署とブログを通して交流したりして、情報共有の重要さを理解してもらう段階だと考えています」(岩田さん)
他にも、新入社員に対して日報をブログにアップさせ、他の人に文章を見てもらうという文章トレーニングを行っているそうだ。指導はコメント欄で行うなど、新人教育の一環としてもイントラブログが活かされている。
また、検索エンジンを開発する企業としてこんなユニークな意見も聞かれた。
「我々は"どういう環境で検索が必要とされるのか?"と常に考えてしまうんですね。キーワードで検索すればある程度記事を拾い読みでき、クリックすることによってより詳しく読むことができる、というブログと検索エンジンの組み合わせは、かなり相性がいいのではないでしょうか」(営業部 畠香さん)
同社のブログ検索パッケージ「WiSE MT」は、スカイアーク社が開発するイントラブログ統合パッケージ「SKYARC Enterprise IntraBlog」にも取り入れられており、あわせて利用することで、企業内での使用に特化したMovable Typeベースのシステムを構築できる。
今後もこのようなMovable Typeをプラットフォームとして使用するパッケージが増えてくると予想される。そこにはBSTが提供するような、インテリジェントな検索エンジンが必須となるであろう。
お話をお伺いした岩田さん、吉田さん、畠さん(左から)
事例データ
・Movable Type Enterprise
・ビジネスブログをオープンさせたのは:2006年4月
・サイトを公開したのは:2006年4月から社内公開
・はじめた理由:自社ソフトウェア評価のため
・制作を担当したのは:社内
・何か手ごたえはありましたか?:検索と組み合わせることによって情報共有ツールとしてのポテンシャルを感じた