商品管理をきちんとやりながら、サイトにも連動できないかなという思いがあったんです。
ウェブサイトとリアル店舗の商品管理をMovable Typeで一元化
旗艦ブランドの「LEMONTREE」ほか、5つのアクセサリーブランドを展開する株式会社レモンツリーは、全ての商品の企画、製造、販売を自社で一貫して行うSPA企業だ。約70のリアル店舗を持つ同社は、2007年10月に、6ブランドのポータルを兼ねたブランディングサイト、そして物販を行うECサイトを全面リニューアルした。
■売上や訪問数が約2倍以上!短期間で得たリニューアル効果
リニューアルされたウェブサイトの構築には、Movable Typeが使われている。レモンツリーがMovable Typeを導入した理由を、同社管理本部長である颯田正彦さんに伺った。
「リニューアル以前からもウェブでのブランディングや物販は行っていたんですが、ビジネスツールとして使い切れていないという思いがあったんですね。実際、物販にしても、思うようには売れていなかったんです。そこで、全面的にリニューアルを行うことにしました」。
リニューアル前のレモンツリーの物販サイトでは購入できる商品の点数も少なかったとのことだが、リニューアルオープンから間もないにも関わらず、売上や訪問数など約2倍以上の成果が上がっているという。
もちろんこれは商品の見せ方を始めとした、ウェブサイト全体のリニューアル効果によるものだが、目に見えて増えたのはカード決済による売り上げ件数だ。
「これまでは代引きが中心でしたけど、今は明らかにクレジットカードで買い物をする人が増えています」。
ジュエリーやアクセサリーを扱うECサイトであるため、「信頼感」は重要になってくる。ショッピングカート機能やクレジットカード決済など購入や支払いに関する基本的な機能はもとより、お客様が求める情報をわかりやすく発信できている点が、サイトに対する安心感につながっていると言える。
■「商品データベース」として使えるのが導入の決め手
レモンツリーのサイトリニューアルには、大きく2つのテーマがあった。
レモンツリーのウェブにおける販売責任者で、同社Web事業本部の平田惠大さんは、その2つのテーマをこう説明する。
「6つのブランドサイトは、それぞれのブランドのコンセプトやイメージを最大限アピールできるよう見せなくてはならない。一方、ECサイトは同じ仕組みをベースとしながらも、ユーザビリティを第一に考慮し、わかりやすく安心して購入できる見せ方をしなくてはならない。これらは全くテーマが違うんです」。
ブランディングのためのサイトづくりと使いやすいECサイトは、まったくベクトルの違う「見せ方」が要求されるのだ。
そのベクトルの違う「見せ方」を可能にするアイデアを提案したのは、レモンツリーのサイトリニューアルをプロデュースしたパワーラボだった。同社の大江さんたちが提案したのは、目的や訪問者にあわせたトータルな企業サイトを、Movable Typeをベースとして構築すること。そして、Movable Typeでなければいけない理由は、そのCMSツールとしての拡張性にあった。
「最初は、まずMovable Typeでブランディングサイトを構築し、次にMovable Typeを利用せずにECサイトをリリース、という順番で考えていたんですが、AlTrade(アルトレード)というプラグインをレモンツリーオリジナル版として大幅にカスタマイズすることで、同時期にシームレスに構築できるだろうと考えました。そこで、すべてのサイトをMovable Typeをベースにしてリニューアルすることを提案したんです」。
AlTradeとはMovable Type用の汎用プラグインで、ショッピングカート機能、クレジット決済機能といったECサイト用の基本機能がパッケージングされたものだ。レモンツリーのサイトには、これらに加え、多様な商品管理機能やコンビニ決済機能が追加されているが、これはオリジナル版としてカスタマイズすることによって可能になったものである。
また、ECサイトにMovable Typeを使う一般的な理由としては、コストを抑えコンテンツ管理が高められるCMS機能があげられるが、この事例の場合は、単なるCMSツールとしてのMovable Type導入にとどまらない。
「もちろん、CMSとして機能しているというのもあります。HTMLを知らない人でも、商品情報を登録するだけでECコンテンツを作ったり更新することができるというのは、業務の効率の向上につながっていると思います。だけど、それよりもむしろ、商品管理機能を充実させたかったのです」(大江さん)。
Movable Typeで使用しているデータベース(MySQL)の大幅な拡張を行い、プラグインによって動作させることにより、ひとつの商品(エントリー)に、その商品がもつ複雑なスペック情報や入荷情報などをヒモ付けできるようにした。レモンツリーでは常に新しい商品が企画・デザイン・製造されている。それらの商品の企画段階から、Movable Typeベースの商品管理システムに登録しておき、実店舗に投入されるタイミングでECサイト掲載用の商品コピーなどをプラスしてブログエントリーとしてページを生成すれば、ECサイトにもアップされる。もちろん、企画段階で登録された商品情報は、インナーでの商品データベースとしても、販売開始前から利用することが可能だ。
レモンツリーのECサイト。プラグインのカスタマイズにより、各種の決済機能を備えたECサイトになっている
■"ワンソースマルチユース"を実現したMovable Type利用の商品管理システム
もともとウェブサイトのリニューアル構想以前から、商品管理のためのデータベースをデジタルで一元化し、それを「ワンソースマルチユース」という形で発信していく姿を、颯田さんは思い描いていたという。
「そうですね。商品管理をきちんとやりながら、サイトにも連動できないかなという思いはあったんです。そこでは6つのブランドの全商品を管理するデータベースをイントラネット上で稼働していて、それを各店舗からも閲覧できるようにして、商品情報をPDFでもプリントアウトできるようなシステムができないか、なんて話を雑談ベースでしていました。そうしたら、ウェブサイトのリニューアルのタイミングでMovable Typeでできるかもしれない、とパワーラボさんから提案していただいたんです」(颯田さん)。
Movable TypeをCMS拡張することにより、単にECサイトを構築するだけではなく、実店舗の現場でも必要とされる商品管理システムとも連携させる、というのがパワーラボのアイデアだ。
「レモンツリーさんのビジネスは、大量生産した商品をどこかに卸すものではなく、自社で企画製造した多品種小ロットの商品を、直営の店舗で販売するという仕組みです。商品の回転が早く、人気のある商品はすぐに店頭から消えてしまうこともある。外部に見せる情報はもちろん、バックヤードでも商品情報を迅速に共有する必要があります。Movable Typeを拡張させることにより、このような業態に役立つビジネスツールとして利用いただけると考えたんです」(大江さん)。
表からはECサイトにしか見えないが、実はリアル店舗の業務も支援できる商品管理ツールとして使われているのが、レモンツリーの事例の興味深い点だ。
「Movable Typeを核とした、商品と店舗と顧客を結ぶ戦略ツール」
それが、レモンツリーがウェブサイトに求め、実現させたコンセプトである。
お話を伺った平田さん、颯田さん、出羽さん、大江さん(左から)
事例データ
・Movable Type(基本ライセンスパック)
・ブログをはじめた時期:2007年10月
・はじめた理由:Eコマースの強化
・制作を担当したのは:有限会社パワーラボ
・何か手ごたえはありましたか?:売り上げが短期間で約2倍増えた。サイト自体へのアクセス数も順調に増加している。