更新作業が格段に楽になったほか、検索サイトから直接アクセスするお客様が増えました。
リノベーション物件や不動産情報を迅速・低コストで更新するためのMovable Type
日建住宅販売株式会社は、リノベーション物件を中心に、住宅や建物などを売買・仲介する不動産取扱業者である。「リノベーション物件」とは、中古建物の基礎構造を大きく変更することなく大規模な改修工事を行った住宅や建物のことだ。改修時に耐震性や防火安全性を向上させるだけでなく、間取り変更や水回りの改修、IT化、オール電化なども施工される。すべてを改修するよりもコストパフォーマンスに優れ、また廃材なども押さえられるため、現在大きく注目を集めている建築手法の1つだ。その日建住宅販売がMovable Typeを使って自社ホームページを構築している。その狙いは何か?同社の課長 鈴木聖由美さんに伺った。
リノベーション物件を中心に取り扱う日建住宅販売株式会社のトップページ。サイト内のほぼすべてのページがMovable Typeを用いて構築されている
■自社ウェブサイトのリノベーションを進める
「弊社は不動産を扱っていますので、物件情報をとにかく迅速に、そして正確にウェブページで公開したいと考えました」。
鈴木さんによると、以前の同社のページは静的に構築されていて、制作・構築を外部の制作会社に委託していたという。
「最新の物件情報を掲載するのに、制作の発注からデータのチェックまで時間がかかるので、実際の情報とウェブ上で時差が生じることもあったのです」。
さらに、サイトの見栄えも十分納得できるものではなかったという。
「リノベーションという注目すべき物件を扱っていながら、地味なデザインだったため、弊社の魅力を伝え切れていないと感じていました」。
そして、扱う物件の性質からページの制作も頻繁なものとなり、制作費用も増大するばかりだったそうだ。それらの問題点を改善するため、鈴木さんはウェブサイトのリニューアルを提案し、無事に社内で承認された。
■Movable TypeをCMSとして利用することでコストが「数分の1」に
現在の同社のサイトは非常にスタイリッシュで、最新の情報が掲載されている。トップページをはじめ多くのページでFlashや画像が多用されていて、訪問者の目を惹くデザインだ。
制作を担当したのは株式会社GENOVA ウェブコンサルティング事業部 1課チームリーダー 馬場祐樹さん。ブログを利用したサイトリニューアルを模索していた鈴木さんに、Movable Typeによる構築を提案したのがこの馬場さんだった。
「鈴木さんにお話を伺ったとき、オリジナルのCMSを使ってサイトを構築するという他社さんの見積もり額を聞いて、あまりに高額だったので驚きました。弊社ならMovable Typeを使ってその数分の1で実現できるという提案をさせていただき、採用に至ったのです」と馬場さんは同社との出会いを振り返る。
GENOVAが手がけるサイト制作の多くは、Movable Typeを使い、システムやデザインを極端に変更することなく顧客の望みどおりにサイトを構築する手法を取る。ところが「鈴木さんの要望をかなえるとなると、通常の手法では難しい」(馬場さん)との判断から、もちろんベースはMovable Typeながら、ほぼオーダーメードに近い手法で構築が行われることになった。
一見シンプルに見える同社のサイトだが、実際には10を超えるブログの複合体として成立している。しかし、多数のブログで構成されていても、管理しやすいよう随所に工夫されている。たとえば、GENOVAの開発した「MT Entry Flex」というプラグインを使うことで、与えられたフィールドに即して情報を入力するだけでレイアウトの綺麗なページの生成を可能にしたり、物件写真や図面画像を管理画面から容易に差し替えられるようにしたり、といった点だ。そのおかげで、ウェブサイトの管理は鈴木さんひとりでも可能だという。
同社サイトの管理画面。複数のブログが有機的に結びついて1つのサイトが構築されている
■アクセス数3倍、こだわりのリニューアルで一般ユーザーも取り込めるサイトへ進化
「サイトの完成まで予定では2カ月と見積もっていましたが、鈴木さんの要望をクリアするために実際には3カ月かかってしまいました」と苦笑する馬場さんであるが、ここには、納期を重視するがために実装の難しい機能を削減する傾向にあるウェブサイト構築の現場において、納期を調整してでも納得のいくサイトを構築しようという、顧客側と発注側両者の妥協を許さない姿勢が見て取れる。
この妥協なき構築作業を経て、鈴木さんの望むとおりにサイトの構築が完了し、2007年8月に無事公開となった。馬場さんは「鈴木さんの要望をほとんど汲み取れたのも、プラグインが豊富でシステムに柔軟性があるMovable Typeの実力のおかげ」という。また、GENOVAの「単にサイトを制作するだけでなく、コンサルタントとしてお客様に関わる」という方針も、このサイトの成功に結びつく大きな要因となっただろう。
サイトリニューアル後は「更新作業が格段に楽になったほか、検索サイトから直接アクセスするお客様が増えました」(鈴木さん)という。さらに、スタッフブログとして『STAFF VOICE』や現在進行中のリノベーション物件のプロダクトブログを掲載して、「スタッフの素顔、ナマの声を見せる」(鈴木さん)ことにより、ともすると閉鎖的な印象を与えかねない不動産業界のイメージを一新し、多くのユーザーを獲得することに成功している。事実、アクセス解析によると、仲介業者だけではなく、検索サイトを使って直接アクセスしてくるユーザーが大幅に増えたという。リニューアル後のアクセス数は約3倍となり、同社のビジネスチャンスが大幅に拡大したことを示している。今後もアイデアを練り、積極的にウェブサイトを利用したいという。
スタッフの顔が見えるスタッフブログ。エントリでは身近なトピックから物件情報、業界の裏話的なものまで、豊富な画像を交えて語られる
鈴木さんは「弊社以外の不動産関連企業をはじめ、まだまだ多くの業種で、ウェブサイトが"止まったまま"の状態であるのではないでしょうか。Movable Typeを使うことと、熱心な制作会社とパートナー関係を結ぶことで、コスト削減の実現と、ビジネスの幅を広げられることに気づいてほしいです」と結んだ。
お話を伺った馬場さん、鈴木さん(左から)
事例データ
・Movable Type(基本ライセンスパック)
・サイトを始めたのは:2007年8月1日
・始めた理由:取扱物件の情報を正確に、すばやく掲載するため。また、ウェブサイト更新のコストを軽減するため
・制作を担当したのは:株式会社GENOVA
・何か手応えはありましたか:ページビューが上昇し、ウェブ経由での問い合わせが多くなった
(文:二瓶 朗)