低コストで高度なカスタマイズを可能にするCMSツール
「得点力学習DS」は、通信教育講座「進研ゼミ」で知られるベネッセコーポレーションが開発した、ポータブルゲーム機ニンテンドーDS用の中学生向け学習ソフトだ。このソフトは通常の小売店では販売せず、ハガキ、電話、FAX、インターネットによる直販のみとなっている。インターネットでの窓口となるこのサイトは、Movable Typeを使って開発されたという。サイトを企画・運営している同社 営業本部 新商品営業部 永田正明さんと、サポートを行うIT戦略部 共通基盤開発課の大木さんにお話を伺ってみた。
■CMSツールとしてMovable Typeを利用
2007年12月のソフト予約受付開始日にあわせて開設されたこのサイト、トップページ以下に4つのコーナーが用意されている。
・得点力ストア
・得点力学習DSの特長
・得点力学習DSの学習効果
・サポート・FAQ
「得点力ストア」はソフトの購入ページ。学年(分野)別、教科別に用意されているラインナップから必要なソフトを選び、ショッピングカート形式で購入することができるようになっている。
「得点力学習DSの特長」はソフトの機能を紹介するページ。Flashを使った中学歴史ソフトの体験版も用意されている。
「得点力学習DSの学習効果」は実際の学習効果を紹介したページ。実際に都内の中学生にこのソフトを試してもらって、取得したアンケートの結果が掲載されている。
「サポート・FAQ」は、ソフトに関するよくある質問について解説するページ。電話などで寄せられた質問も必要な場合は即日追加されるという。
独自に開発した決済部分をのぞき、サイト内のすべてのページはMovable Typeを使って生成されている。だが、ブログサイトの大きな特徴であるコメントおよびトラックバック機能は、商品個別ページにしか表示されていないこともあり、見たところあまりブログサイトという感じはしない。
このサイトにおけるMovable Typeは、ブログ作成ツールというよりもCMS的な使い方をされているようだ。
■すべての作業を部署内でできるように
実は、永田さんの部署でMovable Typeを使ってサイトを構築したのはこれが初めてではない。以前から販売を行っている「ポケットチャレンジ」という学習ツールの購入サイトを、2006年にMovable Typeを使って全面リニューアルしたのが最初だ。
「それ以前の購入サイトは主にHTMLのフォーム機能を使って作成したチープなもので、ユーザーにとってわかりにくいうえ、小さな変更の際にも制作会社に依頼する必要があるため、更新ミス・トラブルが頻発していました」と永田さん。
そのとき、ある開発会社からMovable Typeを使ったリニューアルを提案され、思い切って導入を決めたと言う。その成果について永田さんは、
「すべての作業を部署内で速やかに行えるので、明らかにミスが減りました。ユーザー側から見てもナビゲーションがはっきりして、使いやすいページになったのではないでしょうか」と語る。
「得点力学習DS」は、その「ポケットチャレンジ」のサイトをベースにして開発が行われたため、新規で開発するよりも大幅なコストカットが可能になったそうだ。
■コストをかけずに高度なカスタマイズ
サイトを見ているだけではわからないが実はこのサイト、裏側ではかなり大規模なカスタマイズが行われている。
まず、商品詳細ページなどいくつかのページでは、Movable Typeの管理ページとは別に独自に開発された更新インターフェイスが用意されており、サイトの更新は主にこちらの方から行うようになっている。
独自に用意された商品管理用ページ。商品データベースから取得した情報をそのままブログの方に転記できるようになっている
わざわざこのような形にしたのは主に2つの理由があるという。1つ目の理由は商品に関する記述ミスの防止だ。
「『ポケットチャレンジ』は学年によって教科書体系が違い、教材の中身も細かく変わっていたため、商品構成が多少複雑になっていました。そのため、Movable Typeのデータベースとは別に用意された、商品管理用のデータベースから直接商品のデータを引っ張ってくることにより、転記の際のミスを防ぐようにしています」(大木さん)。
もう1つの理由は時限更新を行うためだ。
「商品の在庫状況やキャンペーンなどの理由によって、各商品のページの更新を深夜に行う必要があるため、こちらで開発したプログラムから、指定した時間にMovable Typeに再構築の命令を出せるようにしてあります」(永田さん)。
他にもオリジナルのプラグインを開発するなど、技術的にも高度なカスタマイズを行っている。
「それでも画面の生成などサイトの基本的な部分はすべてMovable Typeのエンジンを使っているので、ゼロからやるよりも大幅に開発コストを落とすことができました」(大木さん)。
いずれにせよ、Movable Typeの開発に習熟した開発会社の協力は欠かせなかったと言う。
■生産が間に合わないほど売り上げも好調!
今後も商品の展開にあわせて、サイトの方も進化させていくそうだ。
「現在は中学生向け商品のみですが、今後は高校受験などに展開していく予定があるので、それにあわせてサイトデザインそのものも、もっとインタラクティブな設計にしていきたいと思っています」(永田さん)。
さらに、本来のMovable Typeの機能であるブログサイト的な利用も検討していきたいと言う。
「お客様の参考になるのなら、開発者の日記を掲載したり、ユーザーの意見を元に商品を企画していくような企画などをやってみるのもいいですね」(永田さん)。
肝心の商品売り上げの方も生産が間に合わないくらい好調だという。数年後には今とは比べものにならないほど大規模なサイトになっているかもしれない。
お話を伺った永田さん、大木さん(左から)
事例データ
・Movable Type(基本ライセンスパック)
・サイトを公開したのは:2007年12月
・はじめた理由:必要な商品をより簡単に違いなく購入していただけるようにし、かつ更新作業を自社で行えるようにするため
・制作を担当したのは:富士通(株)
・何か手ごたえはありましたか?:導線がとてもシンプルになり、コンバージョンレートが著しく向上しました。運営面でも、サイトの更新ミスが目に見えて減りました
(文:田口 和裕)