ひとつが終わって、また別に作るのではなく、回っていくようなものが理想だったので、それが実現できて満足しています。
ベンチャー企業の成長フェーズに合わせた効果を期待できるMovable Type
クイスクイスは、オーダーメイドインソールのブランド名だ。製造販売を行っているのは、九州に本社を構える日元倶楽部。東京でビジネスを始めて間もないベンチャー企業が、ブランドの知名度を上げるために力を入れたのがウェブサイト作り。安価、簡単、拡張性というすべての要望を満たしたのは、Movable Typeをパッケージ化した株式会社ギャズの「MTブログパック」だった。
クイスクイスのトップページ。製品情報やイベント情報などが掲載されている
■家族の悩み解消からビジネスに発展
日元倶楽部は、宮地裕子さん(代表取締役社長)と宮地徹(専務取締役)さんの夫婦によって経営されている。会社員だったお2人が、本格的にオーダーメイドインソールの作成販売業に乗り出した理由を聞くと、家族の悩み解決がきっかけだったとの答えが返ってきた。
「今年70歳になる私の父が、腰や膝に痛みを感じるようになったんですね。それを解消するためには、体の土台である足や靴から変えていかなければならないと思ったんです。そこで、人間の土台を安定させるための靴やインソールを試してみたのですが、なかなかぴったり合うものがない。足の裏には湧泉のツボがあり、そこを押しだすことで健康に効果があるのですが、その位置がずれてしまうんです。もっといいものを作ろうと思い、自分で研究を始めました」(宮地裕子さん)。
専門家を訪ね歩き、整形外科のセミナーを受けるなどして、独学で足の知識を得ると同時に、簡単に足型をとれる技術を開発した。
「電力資材を収める中で、熱で固まる樹脂があるのは知っていましたので、その逆に、熱でやわらかくなる樹脂を探しました。その樹脂で作ったフラットなインソールをお客様の足に直接あてて整形しますので、拘束時間は2~3分ですみます」(宮地裕子さん)。
今までのオーダーメイドインソールの製造方法は、石膏で取った足型を元に木型を作りそれに合わせて製作するか、3Dスキャナーで取った足型データを元に既存品から選択するのが一般的だった。クイスクイスでは特殊な機械を使わずに即座にオーダーメイド品が作れるのだから、画期的だ。
「素材と製造方法に関しては国際特許を出願しました。ほかにない技術が生まれたので、ぜひこれはビジネスにしていきたいと思い、東京にも拠点を設けることにしました」(宮地裕子さん)。
■真っ先に取り組んだウェブサイト作り
東京でビジネスを開始するにあたり、最初に取り組んだのがブランドの確立だ。ブランド戦略は、ブランディングを専門に行っているイデアブランディングと相談して進めていった。
「インソール自体は巷に溢れているのですが、主流は医療的なものかスポーツ的なものかの両極端なんです。そこで、ターゲットを30代~40代のキャリア女性におき、おしゃれと快適を両立することをアピールするようなブランド戦略をとっていくことにしました」(イデア ブランディング 内田美加さん)。
「ブランド作りはものづくりだけでなく、ネーミングや雰囲気作り、そしてそれをどう知らせるかが重要だと内田さんに教えていただきました」(宮地徹さん)。
世界観を作るうえで、真っ先に取り掛かったのがウェブサイトの構築だ。
「お客様には、実際にインソールを購入する顧客と、製品を販売してくれる企業さんの2種類います。企業のバイヤーさんに対しては、ウェブサイト上でしっかりした企業体が背景にあることを伝える必要があります。バイヤーさんは新しい商材を決めるときに、ウェブサイトからの情報を重要視すると聞いていたこともあり、販路を広げるうえでも、ウェブサイト作りは急務でした。また、顧客の方も素敵なウェブサイトを見慣れているので、いくら製品に自信があっても、外観が整っていないと、そこで判断されてしまう可能性もあります。他社に負けないウェブサイトが必要でした」(宮地裕子さん)。
とはいえ、なるべくコストは抑えたい。また、成長途上の企業のため、コンテンツをフレキシブルに変えられる自由度もほしい。
「そういうわがままに応えてくれるシステムとして、Movable Typeを使ったホームページ制作プランを内田さんが薦めてくれたんです」(宮地裕子さん)。
■Movable Typeをカスタマイズしたパッケージを採用
サイト構築を請け負ったのは、Webサイトプロモーションのコンサルタント会社 株式会社ギャズ。ギャズでは、Movable Typeをカスタマイズした「MTブログパック」を開発・提供しており、クイスクイスのサイトもこのプランによって作られている。
「Movable Typeの管理画面は、そのままだと使いづらいというお客さんもいらっしゃいます。また、テンプレートをいじったら大変なことになった、という話も聞いています。MTブログパックは、初めてお使いになるお客様でも間違いなく更新できるように、必要な箇所しか変更できないようにカスタマイズしてあります」(株式会社 ギャズ 春明力さん)。
MTブログパックの管理画面を見せてもらうと、非常にシンプルな印象を受ける。投稿(エントリーの作成と編集)、管理(カテゴリー作成、ブログの設定)、ユーティリティー(サイトの再構築と確認)しか画面には表示されないので、これならブログに初めて触れる人でも操作に迷うことはないだろう。複雑になりがちな操作も、簡単に行える。たとえば、カテゴリー名には番号を文頭にふり、その番号順に表示させているので、番号を変えるだけで並び替えが行えるといった具合だ。
MTブログパックの管理画面。余分なメニューは表示されないので、初心者でも戸惑いは少ない
料金体系が明確なところもよかったとのこと。
「ギャズさんに頼む前に、他の業者にも相談したのですが、ちょっとしたデザイン変更でも追加料金がかかるなど、予定よりも費用がかさんでしまうことがわかって取りやめたという経緯があったんですね」(宮地裕子さん)。
MTブログパックでは、ホームページ立ち上げまでをギャズが行い、その後の更新はユーザーに任せられている。いわば「売り切り」なので、明確な料金体系にすることができるのだ。ただ、売り切りとはいっても、その後のユーザーサポートにも重点をおき、そこまで含まれたパッケージとなっている。
「何回でも参加できる無料の講習会を、毎月2回開催しています。また、電話やメールによるサポートも行っています」(春明力さん)。
MTブログパックは、ほかにもSEO対策を意識した構造を取り入れるなどのコーディングにも工夫が施されている。
■ブランドイメージの喧伝から営業アシストまでウェブサイトが担う
どういったウェブサイトを作るべきかを考えることは、ブランディングについて詰めていく過程でもあり、何度もヒヤリングする中でコンセプトメイクが進められていった。
「我々から伝えたいことは、山のようにあるんです。でも、それをすべて載せるのがいいわけではなく、かえってノイズになってしまう情報もある。ウェブサイトには何が必要かを考えていくうちに、ブランドの方向性もはっきりしてきました」(宮地徹さん)。
サイトができると、今度はそれが世界観の元となった。
「パンフレットやイベントのポップも、ウェブサイトのイメージを元にして作っています」(宮地徹さん)。
サイトのオープンによって、ブランドの具体的な姿は見えてきたが、ウェブサイトの役割はそこで終わりではない。実際の販促活動をサポートする、重大な役割があるのだ。現在、クイスクイスの販売方法は、イベントなどによる対面販売がメイン。個人の足型を直接取るため、直接コミュニケーションをとる必要があるのだ。いつ、どこで販売をしているのかをお客様に迅速に伝える手段は、ウェブサイトが唯一。イベントスケジュールの掲載は重要な業務のひとつだが、販売をこなしつつ、ウェブサイトの更新を行うのはたいへんだ。その点においても、簡単に更新できるブログのシステムは適していたといえるだろう。
イベント情報など、オンタイムでの情報発信はブログの得意分野といえる
また、イベントを目にした顧客が、家に帰ってクイスクイスのウェブサイトにアクセスする例も多いとのこと。
「お客様から、ウェブサイトを見て安心できそうな会社だと思ったとの声もいただいています」(宮地裕子さん)。
「バイヤーさんからも、いろいろなところでイベントをされているのでということで、お声を掛けていただきました。我々から積極的に営業を行わなくても、先方からコンタクトをしてもらえる。大きな力を持った媒体だと感じています」(宮地徹さん)。
■企業に合わせてウェブサイトも成長する
現在、クイスクイスは成長の真っ只中にある。そのため「どうなるのか、1~2ヶ月先もなかなか読みづらい」(宮地徹さん)という状況だ。サイトも、その成長に合わせて常に変化させていきたいという。
「今までに作り上げたもの、これからしなければならないこと、その段階に見合ったウェブサイトがあると思います。たとえば、近い将来はオンライン販売なども始めたいと思ったので、その対応も簡単に行えるネットショップ構築をベースとしたプランにて注文しました。ひとつが終わって、また別に作るのではなく、回っていくようなものが理想だったので、それが実現できて満足しています」(宮地徹さん)。
MTブログパックには、あらかじめショッピングカート機能も盛り込まれているので、簡単な設定の変更だけで、すぐに始めることができるとのことだ。
今後の予定としては、新商品の開発や、実店舗の開店などが予定されている。それらの情報も、もちろんブログ上で紹介されていく。現在の悩みは、営業から販売まですべて2人でこなしているため、人的余裕がまったくないこと。
「インソール作りは短期間で技術が学べるので、技術者も増やしていけたらと思っています」(宮地裕子さん)。
興味を持たれた方は、クイスクイスのサイトを見てコンタクトを取ってみてはいかがだろうか。
技術力や唯一無二のアイディアを生かして起業するうえで、ウェブサイトの果たす役割は大きい。費用対効果や自由度に優れたブログ型ホームページは、成長途中の企業を支えるには最も適したシステムだといえるだろう。
お話を伺った内田さん、宮地さんご夫妻、春明さん(左から)
事例データ
・Movable Type(MTブログパック)
・サイトを始めたのは:2008年4月
・始めた理由:ブランド知名度の向上、購買意欲の向上。商品関連のイベント情報の発信。
・制作を担当したのは:株式会社 ギャズ
・何か手応えはありましたか:販促ルートの拡大、顧客満足度の向上。
(文:森嶋 良子)