ツールの特長+定期的な更新でSEOに効果を発揮
「ラスフローラ」は東京都青山にあるジュエリーリフォーム・ジュエリーオーダーの専門店だ。ジュエリーリフォームとは、古い指輪やネックレスを最新のデザインのものに作り替えることだ。祖父母や両親などから受け継いだジュエリーを使って結婚指輪などに仕立て直すといった需要が多いという。
2008年7月にMovable Typeを利用してリニューアルされたウェブサイトには、豊富なジュエリーのリフォーム実例やデザイン見本が掲載されており、眺めているだけでうっとりしてしまう。以前からあったサイトをブログ化した狙いについて、ラスフローラを運営するレフノン株式会社 代表取締役の中村忍さんと、制作を担当した有限会社bit 代表取締役の山下潤さんにお話を伺った。
■ユーザーに安心感を与えるデザイン
サイトリニューアルの直接のきっかけはデザインだ。競合サイトに比べてデザインが古くなってきたと感じた中村さんは、検索エンジンを使ってウェブ制作会社を探し、多くの会社からプレゼンテーションを受けたそうだが、最終的に制作を依頼したのはProNet会員である有限会社bitだった。
「ほとんどの会社が"いくらで作れますよ"と値段のことばかり強調していたのに対し、bitさんからは予算面だけではなく、我々の目的である集客効果を上がるためにどのようなサイト作りをすればいいのかを考えたうえで、ブログを利用した総合的な提案をいただきました、山下さんは天才です」(中村さん)。
いくつか提出されたデザイン案の中から最終的に選ばれたのは、白と水色を基調とした見やすく上品なものだ。これは中村さん自身の手で作成されていた以前のサイトを、少なからず継承しているという。
「サイトのデザインで一番気にしたのは信用力ですね。お客様から大切なものをお預かりするわけですから、信用力や安心感は重要です。デザイン的には一番のターゲット層である50歳前後のお客様が好む色である、いわゆるロイヤルカラーを基調にしました。また、お客様がサイト内で迷うことがないよう、オーソドックスでわかりやすいUIデザインも心がけました」(中村さん)。
実際のリニューアル作業は2008年初頭から行われ、7月後半にMovable Typeを使った新サイトが完成した。この時点でコンテンツはほとんど用意されていなかったが、現在では300を超えるリフォーム実例をはじめ、デザイン見本やジュエリーQ&Aなど、多数の記事が掲載されている。更新作業は主に中村さんが毎朝行っているそうだ。
「リフォーム実例やデザイン見本などの素材はまだまだたくさんあります。開店時間前の朝10時から11時までをブログ更新時間と決め、ルーチン化して毎日コツコツと増やしています」(中村さん)。
ブログを作ってはみたものの、ついつい更新作業を忘れがちな人も多い。中村さんのように毎日の業務に組み入れてしまうのは賢明な方法だ。
また、扱っているものがジュエリーだけに、文章による情報だけではなく商品の写真も重要な要素だ。いわゆるブツ撮りと呼ばれる商品の撮影作業も、すべてスタッフの手で行われているという。「最近のカメラは性能がいいですから」と中村さんは謙遜するが、色味や細部のディテールまでよくわかるクオリティの高い撮影だ。
■Movable Typeを使った理由
サイトは「ジュエリーデザイン見本」「ジュエリーリフォーム実例」「お知らせ」など全部で8つの独立したブログから構成されており、トップページにはすべてのブログから取得された最新記事の情報が、自動的に更新されるようになっている。
そのため記事を追加する際も、該当するブログの管理画面から投稿を行うだけでよい。もちろん専門的な知識は一切必要としない。このようなシンプルな運用を可能にしているのは洗練されたブログツールMovable Typeならではと言えるだろう。
bitからのリニューアルの提案には、最初からMovable Typeを使ったブログ形式というのが前提になっていたという。
「お話をいただいたとき、まず考えたのはリアリティの追求です。ジュエリー修理という専門的で競合も多いジャンルですので、リアリティを出すためには実例とお客様からのお喜びの声を大量に見せてあげるのが一番です。そのためには毎日の更新が必須となるため、更新しやすい管理インターフェイスを持つMovable Typeが妥当だと考えました」(山下さん)。
数あるブログ・CMSツールの中からMovable Typeを選択した理由としては、扱いやすい管理画面のインターフェイスの他に、20%を越すシェアから来る安心感があるそうだ。制作会社にとって一番困るのはソフトの開発やサポートを突然ストップしてしまうことだという。その点、サイトやProNetなどから定期的に情報をもらえるシックス・アパート社に対しては信頼を寄せているという。
■Movable Typeを使ったSEO対策
Movable Type選択の理由にはSEO対策も含まれている。
ラスフローラでは以前から「ジュエリー リフォーム」、「ネックレス 修理」といった多数の検索キーワードに対してリスティング広告を出稿していた。それなりに効果はあるものの、競合サイトと入札合戦になってしまうため費用がいびつに上昇し、「広告費のために働いている気分」(中村さん)になっていたという。
そこで考えたのが、リスティング広告に向けていたお金の一部をSEOに向けるという戦略だ。
確かにSEO対策の結果、サイトの検索結果表示順位が上位にくれば、広告費も削減できるだろう。
bitに制作を依頼したのは、提案内容にSEO対策がしっかり含まれていたという理由も大きいという。
「更新作業が簡単なブログを使って記事をお客様がどんどん追加していくことによって、サイトのボリュームが増します。SEO対策を考えるとき、静的で内容が濃いページがサイト内に多数リンクされているというのは、とても好ましい状態です。さらに、記事内には専門用語も多数含まれているので、更新を増やせば増やすほどサイトの専門性も特化し、多数のキーワードに対して検索結果の上位に表示されやすくなってくるわけです。もちろん文法的に正しく、お互いにリンクされた静的なファイルを大量に生成するというMovable Typeの特質も、SEO対策に大きく寄与していることは言うまでもありません」(山下さん)。
事実、Movable Typeの導入後、「ジュエリー」「リフォーム」といったキーワードに対する検索結果の順位は、飛躍的に上がっている。サイトリニューアル後も継続してリスティング広告への出稿も行っているため、キーワードによってはサイトへのリンクが画面上部に複数個表示されるという状態になっている。
「Yahoo! Japan」で「ジュエリーリフォーム」と検索した結果。上部の広告欄と検索結果の2箇所に表示されているのがわかるだろう
また、一般的なウェブサイトと比較して、1人当たりの滞在時間や閲覧ページ数が多いこともアクセス解析の結果からわかっている。これも、リフォーム実例などのリアリティのある専門的なページが、多数掲載されているためであろう。
今後は、現在はまだあまり登録されていない「用語集」や「Q&A」を増やしていきたいという。もちろんユーザーにとって価値のある情報が増えるだけではなく、SEO的にも大きな意味がある作業だ。
将来的には、今回専門性を追求するためにあえて外した、ラスフローラのもう一つの得意分野である時計修理に関する専門サイトも立ち上げていきたいとのことだ。
お話を伺ったレフノン株式会社 代表取締役の中村忍さん、藤谷昌宏さん、国分麻未さん(左から)
事例データ
・Movable Type(基本ライセンスパック)
・サイトを公開したのは:2008年7月
・はじめた理由:SEO対策を本格的に行うため
・制作を担当したのは:有限会社bit
・何か手ごたえはありましたか?:検索結果の表示順が上がった。更新の手間も軽減された