一般的なエンタープライズ向けCMSと比べて非常に安価という点があります。数百万~数千万円規模のCMSを導入するのはリスクを伴いますので、小さく始めていくには、Movable Typeが最適だと思いました。
ウェブサイト制作ツールとしてCMSパッケージ「PowerCMS」を導入
ソニー銀行は、実店舗を持たないネットバンクだ。ネットバンクにおいてウェブサイトは、顧客と銀行をつなぐ重要な役割を担っている。ソニー銀行では、サービス・商品は「MONEYKit」というウェブサイトで提供しており、その一部の制作にMovable TypeをベースとしたCMSを導入し、活用しているという。コンテンツ制作部の石井徹さんにお話を聞いた。
ソニー銀行のウェブサイトの役割は、銀行の営業活動そのものだといっていい。預金取引や振り込みなどのサービス以外にも、金融商品の紹介や資産運用ツールの提供、会社案内など、多くの役割を担っている。
Movable TypeベースのCMSパッケージ「PowerCMS」を利用して制作を行っているのは、「from MONEYKit」という、金融情報や商品情報などを掲載する読み物的なコーナーだ。通常、Movable Typeは、記事の制作と更新、管理に使われることが多いが、ソニー銀行では純粋に「記事制作ツール」として利用しているという。
「ソニー銀行の開発環境は、セキュリティを保持するために、クローズド環境に置かれています。そのため、一部の記事カテゴリのみをインターネットにつながる環境で作り、そのまま本番公開することはできない仕組みになっています。ですから、Movable Typeは記事の制作のみを行い、生成されたデータをクローズドな環境に移行しています」。
「from MONEYKit」では、ソニー銀行が開催したセミナーや為替・金利のレポートなどが掲載されている
「from MONEYKit」の執筆は、ソニー銀行の担当者に加えて、外部のライターなどを用い効率的に行っている。編集を担う営業企画部が中心となり校正を済ませた校了原稿をコンテンツ制作部が受けとって、ウェブ用のデータにする過程でMovable Typeが使われている。
「実際のウェブデータ制作は、外部の制作会社にお願いしています。お願いした会社が、Movable Typeのカスタマイズを得意としていたこともあり、まずは制作会社内でのウェブデータ制作に、Movable Typeを使ってもらうことにしました。そして、できあがったウェブデータのみを納品してもらっていました」。
しかし、納品された後、ソニー銀行社内でデータを修正することもあった。すると、制作会社内のMovable Typeに残ったデータと同期が取れなくなるという問題が起こってしまう。
「その問題を解決するために、Movable Typeを私たち銀行からも操作できる状態にしようということになりました。制作会社に実際の記事作成を行ってもらうことは変わりませんが、誰が修正を行ってもデータは1つだけになり、混乱することがなくなりました。またデータの受け渡しの手間も省くことができるようになりました」。
■CMSとしてMovable Typeを導入した理由
CMSを導入したのはなぜか。
「コンテンツ制作部では、サイト全体の制作を行っています。『from MONEYKit』のほかにも多くの業務があり、制作プロセスを効率化したいと考えていました。制作作業そのものは制作会社にお願いしていても、内部での修正作業はどうしても発生します。CMSの導入によって、ITスキルがあまり高くないスタッフでも、その修正作業や生成されたデータのダウンロードなどを担当できるようになりました。スキルに応じたリソースの振り分けが可能になり、プロフェッショナルなスタッフが、商品開発により注力できるようになりました」。
また、作業効率のアップにも役立っているという。
「 『from MONEYKit』の企画自体は、社内の営業企画部で行っています。営業企画部でとりまとめた原稿がコンテンツ制作部に入稿され、制作会社でウェブデータにするという流れです。そのなかで、できるだけ作業期間を短くしていきたいという希望がありました」。
経済情勢は、日々変化していく。「from MONEYKit」では、市場動向のレポートなどを掲載していることもあり、原稿作成からウェブでの公開に至る期間はできるだけ短縮することが望ましい。CMSの導入によって、データのやり取りや修正作業がスムーズになり、厳しいスケジュールにも対応できるようになった。
さらに、「from MONEYKit」以外のウェブページ制作にもCMSを活用しているそうだ。
「ウェブサイトの部分的なリニューアルなどの際に利用しています。同じレイアウトのページを大量に作る必要がある場合など、専用のブログを作るんですね。そこに、別途Excelで作っておいたデータを一括で取り込んで、ブログ記事(ウェブページファイル)を生成します。用語集を作るときなどは、とても便利ですね」。
別フォーマットのファイルからの取り込みは、「PowerCMS」に搭載されている機能だ。データの作成とブログ記事の作成を分けられるため、大量のページを効率的に作るときに真価を発揮する。ウェブページの制作ツールとして、大いに使える機能だ。
■PowerCMS を選んだ理由
Movable Typeを選んだ理由をたずねてみた。
「まず、一般的なエンタープライズ向けCMSと比べて非常に安価という点があります。数百万~数千万円規模のCMSを導入するのはリスクを伴いますので、小さく始めていくには、Movable Typeが最適だと思いました」。
「PowerCMS」を採用したのは、制作を行ううえで便利な機能が搭載されていたからだ。さらに、要望に対して、柔軟に対応してくれる点も大きかったという。
「いろいろな要望を出して、対応してもらっています。たとえば、Movable Typeの環境を2つ用意してもらい、1つを制作用とし、もう1つを完成データ確認用にしてもらっています。これで、できあがったデータを確認している間にも、後続の制作作業を行うことができるようになりました。また、ユーザーごとにデータ修正の可/不可のロックをかけることができるので、データの管理を安全に行えます。細かい機能としては、データを開発環境に移行する際のファイルリストを同時に作成・ダウンロードする機能も付けてもらいました」。
使っているうちに要望が出てくることもあり、必要に応じてカスタマイズしてもらっている。
「時間もお金もそれほどはかかっていないと感じています。プラグインを作るのが得意な会社なので、必要に応じてスピーディに作ってもらえます。かゆいところに手が届くという感じですね。銀行にとってウェブは大事ですが、事業を継続するための基本的な企画や、コンテンツそのものに重点を置く必要があります。ツール開発など、本来の業務以外の部分をお任せできると、とても助かります」。
信頼できる制作会社に可能なかぎり任せることで、本来の業務に専念できるという効果もあるということだ。
「ネットバンクにとってはウェブがすべて。ウェブサイトは、確実に力を入れなければならないところです。ソニー銀行は情報提供力を高く評価されていますので、今後も更新頻度を高め、情報を充実させていきたいと思っています」。
制作補助ツールとしてMovable Typeを導入することで、業務の効率化、ひいてはサイトの質の向上まで見込める。ウェブサイトの充実が顧客満足度に直結するネットサービスにおいて、Movable Typeは力強い助っ人となっているようだ。
お話を伺った石井さん
事例データ
・Movable Type(PowerCMS)
・サイトを公開したのは:2008年4月
・はじめた理由:ウェブサイト制作ツールとして導入
・制作を担当したのは:アルファサード株式会社
・何か手ごたえはありましたか?:制作~更新運用効率がアップした