「街づくり・流通ルネサンス」は、流通・小売業向けのさまざまな分野の製品やサービスが集結する総合展示会だ。今年で38回を数える「JAPAN SHOP」など8つの展示会を同時開催しており、最近ではウェブサイトの活用に力を入れている。2009年にはウェブサイトを全面的にリニューアル。Movable Typeを導入し、時代に即したウェブサイトへと進化した。リニューアルの狙いとMovable Type導入メリットについて、「街づくり・流通ルネサンス」を主催する日本経済新聞社イベント事業本部の桂景一さんと、ウェブサイト構築と運営を担当した株式会社スカイアークシステムの桐田寛之さんにお話を聞いた。
「街づくり・流通ルネサンス」トップページ。各展示会のポータル的な役割を持っている。
出展社が入力することで情報鮮度を上げる
「街づくり・流通ルネサンス」のウェブサイトでは、各展示会ごとにページが分かれている。それぞれの展示会のページ構成は統一化されており、出展社情報やニュース、コラム、出展社のブログなどが掲載されている。
出展社の数は展示会ごとに異なるが、全体では1,000社以上にのぼる。各社ごとに個別の出展内容を掲載する必要があり、通常であれば事務局側で大量のデータ登録が必要となるが、今回のリニューアルを機に各社に自ら入力を行ってもらう仕組みを拡張することで情報の鮮度を維持し、事務局側の省力化を果たしている。
展示会への出展申し込みは、押印が必要になるため実際の書類を提出する必要があるが、その後の情報登録作業はネットを通じて行われている。出展社が利用できる機能は、展示内容や連絡先などの入力のほか、ウェブサイト内に設置された自社ブログへの投稿や来場者から寄せられた質問への回答などだ。ウェブ上に掲載される情報のほか、会場で配られるガイドブックに載せる内容も、各社がネット上で入力する。
入力の省力化だけではなく、より正確で新鮮な情報が掲載できるというメリットもある。
「展示会に向けて新製品を開発している会社も多く、開催前日に発表されることも珍しくありません。その場合、事務局が事前に情報を集めて掲載することは難しいんですね。ウェブサイトに出展社自ら登録してもらう形なら、最新の情報を提供することができます」(日本経済新聞社 桂さん)
展示会「JAPAN SHOP」のトップページ。トピックスやニュース、出展社情報、コラムなどが掲載されている。ほかの展示会もコンテンツ内容は統一されている。
誰でも使えるサイトにするために展示会運営用の補助プログラムを開発
ウェブサイトの構成は少々複雑だ。中核を担うのは Movable Type だが、オリジナルのプログラムや Microsoft Access などを連携させてシステムを構築している。まず、主催者側で Microsoft Access を利用して申し込み書類に書かれた連絡先や住所などの基本情報を登録し、CSV 形式のファイルで Movable Type にインポートする。すると出展社ごとに Movable Type のユーザーアカウントが作成される。出展社がログインすると表示されるメニュー画面は、オリジナルのプログラムだ。不必要な項目を省いたわかりやすい画面を使って、入力操作を行うことができる。ここで入力したデータは Movable Type のデータベースに送られ、エントリーとして更新される。
「Microsoft Access を利用しているのは、住所入力が簡単だったり、郵便物に貼るラベル出力ができるなどのメリットがあるからです。昨年以前に登録したデータもそのまま利用することができました。出展社用にメニューを用意したのは、会社ごとに IT スキルにばらつきがあるため。全社に必ず入力してもらわないといけない情報があるので、難しくて入力ができないということがないように、できるだけ敷居を下げたかったんですね」(日本経済新聞社 桂さん)。
「ウェブサイトのページ作成は、すべて Movable Type で行っています。パブリッシュツールとしての活用ですね。出展社向けだけではなく、事務局用の管理のメニューも用意しています。ここでは、出展社が入力した内容の確認と承認、メールマガジンの発行なども行うことができます。多くの人が利用し、フローも煩雑になるので、わかりやすさを優先するには、やはり独自のものを作ったほうがよいという結論になりました。Movable Type との連携は問題なく行うことができました」(スカイアークシステム 桐田さん)
Movable Type を選んだ理由のひとつとして、周辺プログラムとの連携や、データのインポートなどの拡張性の高さがあるという。
「以前も CMS を使っていたのですが、すべて独自開発のものだったので、デザインのちょっとした修正や、他のソフトとの連携などにも手間がかかっていました。なので、今回は、絶対にオープン系のものを使いたいと考えていました」(桂さん)
「Movable Type の場合は、さらにシックス・アパートのサポートが受けられる安心感があります。問題があった場合でも、解決への糸口がすぐに見つかります」(スカイアークシステム 桐田さん) データのインポート用に、プラグインの開発も行った。
「日経新聞の記事をクリッピングして載せているのですが、もともとのデータが特殊な形式になっているので、プラグインを利用することで自動的にサイトに掲載できるようにしてあります」(スカイアークシステム 桐田さん)
利用者のスキルやニーズに合わせ、自由にツールを組み合わせることができるのも、Movable Type の強みだ。
コミュニケーションの場として活用
来場者は、ウェブサイト上で展示会概要や出展社の情報を見られるほか、事前登録を行うことができる。
「ユーザビリティも確実に上がりましたね。たとえば、細かい機能では、パンくずリスト(階層の深さを表す表示)も以前はなかったですし。デザインも一新して見やすくなったと思います」(日本経済新聞社 桂さん)
また、出展社と来場者のコミュニケーション機能も強化した。
「Q&A 機能を設けました。来場者がウェブサイト上で質問を書き込むと、出展社からの返事がもらえるという機能です。やりとりをウェブサイト上に公開するかどうかは、質問の際に選択することができます。直接的な商談に結びつくような内容であれば、非公開にすることもできます。実際に運用してみた感触としては、出展社と来場者ともに、この仕組みを積極的に活用しようという姿勢が見られました。今後はもうちょっと質問の数を増やし、来場者と出展社とを結び、展示会での商談やビジネスを促進するツールとして使ってもらいたいですね」(日本経済新聞社 桂さん)
2009年の展示会は無事に終了し、現在は次回開催に向けて準備中だという。
「出展社の ID は1年間有効です。そのため、年内は引き続きブログを利用してもらうこともできます。来年の出展申し込みをしてもらえれば、同じ ID でデータを引き継ぐことができます。とはいえやはり展示会が終わると更新もひと段落といったところですね。今回、課題が見えてきたので、来年はさらに改良をしたいと思います。現在でもモバイル対応はしているのですが、より活用する方法も探っていきたいですし、ウェブサイトをきっかけとしたコミュニケーションの活性化も目指していきたいです」(日本経済新聞社 桂さん)
リニューアルの満足度は高い、といいながらも、目標はさらに高いところにあるようだ。
「世の中にいろいろな展示会はありますが、日経新聞というメディアがやっていることもあり、イベントを通じて業界や社会全体に貢献していくという方向性をしっかりと守っていきたいと思っています。そのうえで、ビジネスの場としての展示会をさらに活性化させていきたいですね」(日本経済新聞社 桂さん)
Movable Type の拡張性を生かし、来年度には更にブラッシュアップしたウェブサイトが見られそうだ。
お話を伺ったスカイアークシステムの桐田寛之さん(左)、日本経済新聞社の桂景一さん(右)
事例データ
- Movable Type Enterprise(現 Advanced)
- サイトを公開したのは:2009年1月
- はじめた理由:サイトの活性化、デザインの変更など
- 制作を担当したのは:株式会社スカイアークシステム
- 何か手ごたえはありましたか?:使い勝手の向上、サイトの活性化