2013年10月、トッパン エムアンドアイ株式会社(現TMIソリューションズ株式会社)のパートナー事業を分離する形で、IBM製品を販売する指定ディストリビューターとして設立された株式会社グロスディー。同社は、市場のニーズに応じて拡大する取扱製品と、パートナー企業とのコミュニケーション活性化を目的に、会員制の情報発信サイト「Partners inDex」(パートナーズインデックス)を開設。CMSには「Movable Type」(以下、MT)をベースとした高機能CMSである「PowerCMS」が採用された。今回のプロジェクトについて、同社 執行役員 技術マーケティング部長の清水智満さんと同部 担当課長の樋元朝美さん、構築を担当した有限会社シーエムパンチ 代表取締役の佐々木康彦さんにお話をお伺いした。
Web化による情報提供の標準化と、担当者の情報更新の負荷軽減が課題
同社は2013年10月の会社設立後、コーポレートサイトのリニューアルと「Partners inDex」の開設に着手した。
「コーポレートサイトは企業情報、取扱製品やご支援内容をお伝えするとともに、弊社からのニュースを随時発信するようリニューアルしました。『Partners inDex』は、『パートナー様にタイムリーにかつわかりやすく必要な情報をお届けする』というコンセプトの元に開設したサイトです」(樋元さん)
同社のパートナー企業は、IBMの製品を専門に取り扱うパートナー、IBM以外の製品を扱うパートナーを合わせ120社を超える。技術マーケティング部では、そうしたパートナー企業に対するハードウェア製品の構成作成の支援や技術的なサポート、製品情報・セミナー情報やキャンペーン・オファリングなどの情報提供を行う。
「前身の会社でもパートナー向けの情報発信はしていたのですが、会員制サイトという規模のものではなく、Webサイトを通じた情報提供を強化したいという課題を感じていました。また、すべて手組みで構築し自社運用しており、セキュリティ面にも懸念がありました」(樋元さん)
「これまで、担当者が手作業で作成、送付していたパートナー様向けの情報をWeb化し、個別対応していた作業を標準化したいという思いがありました。その意味からも、『Partners inDex』は、なるべく多くのパートナー様に見に来ていただく必要があり、そのためには、情報を頻繁に更新する必要があると考えていました」(清水さん)
こうした情報の更新性の高さに加え、「スマホやタブレットへの対応も、あとで対応するのは難しいので、最初から意識した」(清水さん)というモバイル最適化も一つのテーマであった。
コラボレーションツールを駆使し、PowerCMSの柔軟性の高さも相まって、約1ヵ月半という短期間で公開に漕ぎつける
では、PowerCMS選定の経緯はどのようなものだったのだろうか。樋元さんは以下のように語る。
「イメージや必要な機能を洗い出し、いくつかの会社にご相談し、提案をいただきました。CMSについては、WordPress、スクラッチでの開発などいくつかの提案があったのですが、その中で最も弊社のやりたいことが実現でき、コスト面でも優位性のある仕組みが、CMパンチさんに薦めていただいた『PowerCMS』でした」(樋元さん)
「BtoBマーケティングのサイトでは、メーカーサポートが受けられる優位性からMTをおすすめすることが多いです。また、今回は、会員管理機能と、ログインした会員に対する情報の出し分けの機能が必須でしたので、高機能なPowerCMSで提案を行えば、その後の機能拡張にも柔軟に対応できると考えました。また、インフラはセキュリティ面のリスクと保守、管理に対するコストを考慮し、クラウドで利用できるパイプドビッツの『SPIRAL』を用いた提案としました」(佐々木さん)
Partners inDexのシステム構成
コーポレートサイトと「Partners inDex」への情報更新は、技術マーケティング部の8名の担当者がPowerCMSを通じ、自ら行えるように設計された。
「コーポレートサイトでは、ニュース、トピックス、技術支援メニューなどにそれぞれブログが割り当てられ、担当者が情報更新を行っています。『Partners inDex』は、パートナー様ごとの契約更新情報のほか、IBMのサイトから抽出したパートナー向けのキャンペーン・オファリング情報、製品発表レター、重要技術情報、また、IBMを含めた各社のセミナー・イベント情報を整理して掲載しています」(清水さん)
また、開発期間の短さも特筆すべきだ。「Partners inDex」の構築は、コーポレートサイトのリニューアルと並行して行われ、2014年5月末にコーポレートサイトがリニューアルオープンし、その1ヵ月半後の同7月に「Partners inDex」がオープンしている。
「モバイル最適化ということで、レスポンシブに対応しています。ツリー構造のメニュー名をどこまで表示させるか、デスクトップとは異なる画面表示の中で可読性を高めるのに苦心しました。グロスディー様に協力いただきながら、ワイヤーフレームの共有や確認、開発を重ねていきました。コラボレーションツールや、プロジェクト管理ツールなどを活用しつつ、PowerCMSの柔軟性の高さも相まって、スムーズに開発を進めることができました」(佐々木さん)
SEOの観点からもモバイル対応したサイトの評価は高まっており、レスポンシブに対応したBtoBサイトというのは、同サイトの差別化ポイントとなっている。
70社、500名以上が会員登録するサイトとして、掲載する情報の質に注力できる体制が整った
PowerCMSの導入効果について、樋元さんは以下のように語る。
「それまでブログやソーシャルメディアの更新を行ったことがない担当者でも簡単に情報を更新できるようになりました。PowerCMSに触れたのは、導入時が初めてでしたが、直感的に操作できるので、操作系の習熟については問題ありませんでした」(樋元さん)
「ご利用いただいたパートナー様からは、シンプルで使いやすいとの評価をいただきました。『Partners inDex』の登録企業数は70社、500名以上にユーザー登録をしていただき、より多くのパートナー様にご利用いただけていると実感しています。社内的には、わかりやすく、明るいイメージのサイトになったと言われました」(清水さん)
情報の更新性が高まり、社内外の認知度も徐々に高まっている。モバイル最適化については、現在、全体のアクセス数の13%をモバイル端末が占めているということだ。
「これまではモバイル向けのサイトもなく、どれだけのお客様が活用しているかもほとんど把握できていませんでした。この2月からは、弊社からの情報発信のメールを一本化し、当サイトへの誘導を促すように変更しました。アクセス数も徐々に増えているところで、今後はさらにユーザーが増えていくことを期待しています」(清水さん)
「掲載する情報の質に注力できるようになり、情報のクオリティが統一されつつあると感じます。社内でも、『それはPartners inDexに掲載されている』といった会話を耳にすることがあり、掲載している情報を業務に活用している部署もあるので、社員の認知度は高まってきていると感じます」(樋元さん)
検索機能の強化や、よりビジネスに直結した「双方向の仕掛け」が今後の課題
今後のサイトの機能拡張などについて、清水さんは「双方向な仕掛け」というキーワードを挙げてくれた。
「今後はパートナー様にご提供するコンテンツの種類を増やしていきたいです。そのために、検索機能の強化も考えていく必要があります。また、現在の『Partners inDex』は、一方通行の情報提供ですが、例えば、契約情報の更新リクエストと、見積書の送付、契約完了までの流れをWeb上で完了できるように、より多くのパートナー様に登録してもらい、よりビジネスに直結したパートナー様とのコミュニケーション機会を増やしていきたいです」(清水さん)
では、MTやPowerCMSについて期待することについてはどうか。最後に、シックスアパートやアルファサードに期待する役割について総括していただいた。
「『PowerCMS』については、クラウド版のリリースを期待したいです。運用する立場では、セキュリティアップデートなどの保守、運用は必須ですが、なかなかリソースが追いつかない面もあり、その部分を解決するソリューションに期待しています」(清水さん)
「マーケティングの領域は、今までできなかったことがシステムを使って自動化、省力化できるようになっていくと思うので、新機能のリリースや、他社でどのようにビジネスに活用しているかという事例を共有していただきたいです」(樋元さん)
ユーザーにとっては、自分たちが何のツールを使っているかを意識せずに、やりたい施策を実現することが求められてくる。パートナー企業と自社ビジネスを結びつけるマーケティングツールとして、CMパンチとPowerCMSに求められる役割は、今後もますます大きくなっていくだろう。
左から、株式会社グロスディーの樋元朝美さん、清水智満さん
事例データ
- 使用されたソフトウェア・サービス:PowerCMS
- サイトをリニューアルしたのは:2014年5月(コーポレートサイト)、同7月(Partners inDex)
- サイトリニューアルの理由:デザイン刷新とモバイル最適化、更新担当者の負荷軽減、会員管理機能の強化を目的として
- 制作を担当したのは:有限会社シーエムパンチ
- どのような手ごたえがありましたか?:情報の更新性が高まり、社内外の認知度も徐々に高まっている。モバイル最適化については、現在、全体のアクセス数の13%をモバイル端末が占めている