グローバルな展開を目指し、インフォグラフィックスの投稿専門サイトを開設
ソーシャルメディアを利用したPRやマーケティングを得意とする株式会社カーツメディアワークスは、インフォグラフィックスを専門に取り扱うユーザー投稿型のオウンドメディア「インフォグラミー」を運営している。インフォグラフィックスとは、数値データなどの情報をデザインしてグラフィック化したものだ。同社代表取締役の村上崇さんと、同サービスの企画・制作を行った株式会社かっぺの樫田壮一郎さんにお話をうかがった。
インフォグラフィックスのYouTubeを目指したい
今回お話を聞かせてくれた村上さん
「グローバル展開のできるサービスを求めていました」と語るのは、カーツメディアワークス代表取締役の村上 崇さん。「弊社はPR会社ですので、メディアを通したコミュニケーション戦略を日々模索しています。ただし、どうしても企業はニュースリリース、プレスリリースになってしまいがち。一般の人には堅くて面白くないのでなかなか伝わりません。そうでなくて、自社がメディアを持ち、グローバルに情報発信することが大事なのですね。そこでどうしたら日本を飛び出してアジアや欧米に情報を届けられるか...と考えた時、以前から興味のあったインフォグラフィックスに気がつきました」(村上さん)
村上さんは、インフォグラフィックスはあくまで「グラフィック」なので言語を問わない表現が可能、つまり言語を超えた世界共通のソーシャルコミュニケーションツールであるという点に目をつけた。
さらに村上さんのインフォグラフィックスに関する熱い話は続く。
「インフォグラフィックスの起源は、洞窟に残されていた太古の壁画に遡ります。まだ言語が発達していなかった時代、人々はグラフィックによって情報を伝えたのです。ですから、インフォグラフィックスには『伝えたい』という想いが濃縮されているのです。そして、そこでは言語が問われません。
いっぽうでインフォグラフィックスを作る人達のことも考えました。彼らはひとつの作品を作るのに、我々からすると驚くような労力をかけています。そんな彼らに対して、作品を発表する場所というか、ポートフォリオの場を提供したいという想いもありました。インフォグラミーはインフォグラフィックス版のYouTubeを目指しているのです」
しかし、ユーザー投稿型で、かつこれだけデザインにも凝ったサイトは、構築や運用にも苦労があるのでは?この点については樫田さんにお話をうかがった。
Movable Type 5を「部品」として考える
キャッチ画像の部分が
Movable Type5で構築されている
「インフォグラミー」はソーシャル連携の高さ、ユーザー投稿、そしてその管理、さらにはニュースの定期的な更新機能を有するなど、サイトの構造はかなり複雑で、運用も大変なのではないか?
「実は、それぞれの機能は部品化されていて、別々に運用がなされています」(樫田さん)
というと?
「今回のサイトを機能で分割すると、まずサイトのヘッダ・フッタとメニュー部分、TOPページのキャッチ画像を表示する部分とニュースコンテンツ、そしてユーザー投稿を受け付け管理する部分の3つに分けられます。内部では、それぞれが独立してHTMLを吐くようになっており、最終的にはSSIによって統合され、ブラウザに表示する形となっています。つまり、デザインの必要なヘッダ・フッタとメニュー部分はデザイナーさんが管理し、一方でユーザー投稿と管理部分は弊社の独自システムで管理しています。TOPページのニュースとそのコンテンツ部分は、Movable Type 5を使って構築・運用しており、村上さんも簡単に更新できるようになっています。つまりこのサイトでは、Movable Type 5をニュースコンテンツの更新だけでなく、キャッチ画像更新のためのツールとしても使っています。全てをMovable Type 5で構築するよりも、適材適所にツールやシステムを統合して構築することで、制作コストを下げることができました」(樫田さん)
なるほど、大規模なサイトを設計するケースにおいて、運用者が更新に使う部分のみをMovable Type 5で構築することによって、各社の管理範囲の切り分けも単純明快にした上に、コストパフォーマンスも最適化されたとのことだ。ちなみにいままでの運用において大きなトラブルは1度も起きていないそうだ。ちなみに村上さんは元々Movable Typeによるブログ更新を長年続けていたそうで、今回のインフォグラミーにおいても、ニュース更新などについては苦労なく行えているという。
オウンドメディアの効果を早くも発揮
運用と構築についてお話を聞かせてくれた
樫田さん
現在のインフォグラミーでは、投稿を募集することに加えて、村上さんのほうで世界の素晴らしいインフォグラフィックを紹介する活動も行っている。この辺りについてもおうかがいをした。
「インフォグラフィックは、とてもソーシャルとの関連が強いと思っています。というのも面白い特徴として、半年前に投稿されたりした作品に対して、ずっとFacebook『いいね!』やTwitterでの言及が毎日少しずつ付き続けているのです。つまり鮮度が重要なのではなく、いつでもその場で価値が発生し、シェアしたくなる種類の情報ですね。そのため、ソーシャルボタンの設置については変更に次ぐ変更を経て、いまの形に落ち着きました。作品一覧ページにて、それぞれの作品に対してソーシャルボタンを付与しているところが特徴になっています」(村上さん)
まさにロングテールコンテンツ型のオウンドメディアである。ちなみに、このオウンドメディアを立ちあげた感触は?
「実際に好感触です。例えば様々な企業さまから、インフォグラフィックの仕事をお願いしたいという相談をいただくことが増えてきました。これは、インフォグラミーがポートフォリオとしてうまく効果している結果だと考えています。同時にインフォグラフィックが得意な企業さまからは、インフォグラミーに企業ページをもち、ポートフォリオとするとともにユーザーとコミュニケーションをとりたいというご要望もいただいております」
オウンドメディアを立てたことにより、コンテンツの価値がうまく自社の業務に活用されているようである。最後に、今後のインフォグラミーの展望についてはどうだろうか。
「現在のサイトはまだスマートフォンに対応していません。インフォグラフィックのように情報量の多いコンテンツが、スマートフォンの画面にマッチするかどうかは検証中です。どちらかといえば、アプリを作る方向が正しいのかもしれません。一方で、インフォグラフィックを制作する人を育成したい、紹介したいという気持ちがあります。実はフィリピンやパキスタンなど、アジア地域にも優秀なインフォグラフィック作家がいます。彼らの作品がもっと見られて評価されるようになっていけば、グローバル化の観点からも理想ですね」(村上さん)
インフォグラフィックのオウンドメディアという日本初の試みには、グローバル化に対する熱い想いが秘められていた。「アジアにおけるインフォグラフィック界の登竜門はインフォグラミーだ」という時がくることを願っている。
今回お話を聞かせていただいた、樫田さん(写真左)、村上さん(写真中央)、そして株式会社かっぺ代表の金子輝幸さん(写真右)
株式会社カーツメディアワークスのインフォグラフィックコミュニケーションサービス「インフォグラミー」
事例データ
- Movable Type
- サイトを公開したのは:2011年10月26日
- はじめた理由:グローバルな情報発信をするため
- 制作を担当したのは:株式会社かっぺ
- 何か手ごたえはありましたか?:インフォグラフィックに関する問い合わせから業務につながっている