中央大学法学部通信教育課程は、大学通信教育の草分けとして高い評価を受けている。通信教育では、自宅で教材を使って学び、レポートを提出することで単位を修得することができる。一定の期間、実際に教室に足を運んで授業を受ける必要もあるが、最近ではインターネットを利用したオンデマンド型の授業も実施している。今回Movable Typeを利用して、サイトのリニューアルを行い、よりわかりやすく利用されるサイトへと生まれ変わった。同大学の入学・広報・教材グループのみなさん、サイトの構築を行った株式会社NTTデータ・アール(旧株式会社ウェブプロデュース)の杉原隆一郎さん、三浦徹斎さんにお話を伺った。
在学生と志願者の双方に役立つサイトへとリニューアル
リニューアルが行われたのは2008年12月。以前よりCMSの導入を検討しており、さまざまなツールが検討されたが、最終的に選ばれたのはMovable Typeだった。 「Movable Typeの導入は弊社からご提案しました。費用対効果はもちろんですが、CMSとしての基本機能に加えカスタマイズ可能な点が多く、さまざまな面から考えてMovable Typeが最適だと判断しました」(NTTデータ・アール 杉原さん)。 「Movable Typeは、他のツールに比べて安価で導入しやすいという印象がありました。ちょうど総合政策学部の研究室がシックス・アパートとブログ・ツール「新聞ブログ」を共同開発したという発表があり、安心して導入することができました」(大学 Hさん)。
以前に比べ、頻繁に「お知らせ」が掲載されるようになり、在校生からのアクセスも増加した。
以前は、Hさん一人でドリーム・ウィーバーなどのウェブサイト制作ツールを使用してサイトの更新を行っており、負担の大きさが問題となっていた。大学のサイトでは、定期的に更新を行う必要があるページが多い。年度末に制度の変更を行い、月ごとに学生に発送される冊子に掲載されている情報を掲載するなどの作業だ。また、それ以外にも災害による休講など、緊急情報の掲示作業が発生する。
「以前はちょっとした更新でも、プリントした紙に赤字を入れてHに渡し、修正を行ってもらっていました。各担当者が入力できるようにすることで、Hの負担を減らすと同時に、即時性があがることを期待しました」(大学 Kさん)。
多くのスタッフが更新作業に携わるようになると、管理権限のゾーン分けが必須になってくるが、Movable Typeの管理機能を使えば、簡単に設定ができる。ブログごとに修正・更新が可能なグループを設定し、各スタッフは自分の所属するグループのページだけを操作できるようになっている。現在は15名のスタッフがサイト更新にかかわるようになったが、全部で5つのグループに分け、それぞれの担当ページのみを更新できるようになっている。
ターゲットを分析し、要求に合わせた情報を掲載
トップページから「志願者の方へ」をクリックすると、志願者に向けたコンテンツだけがまとめて表示される。
リニューアルの際に、改良点として強く意識したのは、志願者向け情報の強化だったそうだ。
「以前は、在学生向けの色が濃く、志願者を対象とした情報が少ないと感じていました。そこで、入学を検討するための情報を増やすことを第一の目標としました。学校の検討材料として、今はウェブサイトを利用する人が多いですからね」(大学 Uさん)。
通信課程の志望者には、社会人も多い。働きながら学ぶことができるのか、費用はどれくらいかかるのかなど、志願者が疑問に思う内容を具体的にイメージして回答をつくり、その設問をそのままトップページ上に掲載することにした。サイトを訪れると、疑問点がすぐに表示されるので、強く志願者にアピールすることができることになる。
事務室と学生のコミュニケーションを促進するコンテンツは「通教チャンネル」としてまとめられている。事務室ブログやアンケート、在学生の声などが掲載されている。
在校生向けには、コミュニケーションを強化するためのコンテンツを増やした。
「ブログなどで事務局の生の情報を掲載し、親近感を持ってもらえるようにしています。また、サイト上で答えられるアンケートを設置しました。冊子の表紙の色をアンケートでたずねてみたら大量の回答があり、こんなに多くの人が見てくれるんだと実感しました」(大学 Eさん)。
アンケートの集計部分は独自にプログラムを作成しているが、表示部分にはMovable Typeのテンプレートを利用している。Movable Typeの拡張性の高さを利用した機能だ。
「PowerCMS for MT」でデータ入力を省力化
サイトのリニューアルを行う上では、以前のサイトデータを移行する作業が必要になる。また、新しいコンテンツの入力作業も発生する。それらの入力を助けたのが、「PowerCMS for MT」だ。「PowerCMS for MT」はMovable Typeをベースに開発されたCMS機能強化製品で、CSVファイルなど、さまざまな形式のファイルを一括でインポートし、エントリーの自動生成を可能にすることができるほか、ワークフロー、高機能WYSIWYG、ページ分割、コンテンツのソート順指定、時限公開、フォーム作成機能など、CMSに求められる機能が利用できるようになる。
「実際にインポートし、ページ生成する作業自体は瞬間的に行うことができます。開発工数を大幅に減らすことができ、時間の短縮ができるため、その分サイトの構造設計や、コンテンツの練りこみに時間を割くことができました」(NTTデータ・アール 三浦さん)。
ほかにも、カテゴリーの並び替えや、入力画面のカスタマイズなどにPowerCMSの機能を利用しているとのことだ。
「ウェブサイトのわかりやすさ」が志望理由に
リニューアルの効果は、目に見えて上がっているという。
「入学者を対象としたアンケートに、志望理由を書く欄があるのですが、いままでと比べて『ホームページがわかりやすかった』という回答がとても増えました」(大学 Kさん)。
実際のアクセス数も伸びている。
「リニューアル2ヶ月後のデータでは、前年と比べて訪問者数、ユニークユーザー数とも2割ほど増え、ページビューも4~5倍に増えています。滞在時間も2.5倍に増えました。ページ構成を見直し、ターゲットや目的を明らかにしたレイアウトにした効果が出ているのではないでしょうか」(NTTデータ・アール 杉原さん)。
また、担当者の業務軽減にも役立っているそうだ。
「今までは、卒業までの費用や校舎までの道順など、同じ内容の質問電話を受けることが多かったんですが、それがほとんどなくなりました。そこからも、サイトがよく見られていると実感できますね」(大学 Hさん)。
業務の効率化とコンテンツ力のアップを同時に成し遂げた今回のリニューアルは、大成功だといえる。今後はさらに志願者を増やすため、コンテンツ強化に努めていきたいそうだ。ほかの大学との差別化を図るためのツールとして、ウェブサイトの役割は今後も増していくことは間違いない。中央大学法学部通信教育課程のウェブサイトは、大学サイトのありかたとして、よい参考例となるだろう。
事例データ
- Movable Type 4.2
- サイトを公開したのは:2008年12月
- はじめた理由:CMSの導入、志望者向け情報提供の強化
- 制作を担当したのは:株式会社NTTデータ・アール(旧株式会社ウェブプロデュース)
- 何か手ごたえはありましたか?:アクセス数の増加、業務の効率化などが実感できた。