インターネットサービスプロバイダからスタートし、ネットワーク、セキュリティからウェブデザインに至るまで、幅広いビジネスをカバーする株式会社ネットフォレスト。同社は2009年ごろよりCMSとして「Movable Type」(MT)を継続利用してきており、コーポレートサイトの基盤としても利用している。今回、情報構造の見直しやSEO対策など、サイトのモダン化を目的にコーポレートサイトの刷新を行なった。MTを継続利用する経緯や活用のポイントなどについて、同社 セールスグループ WEBコンサルティングチーム リーダーの三上晃弘さんと同ディレクターの龍川寿美子さんに話を聞いた。
2009年よりMTを利用、コーポレートサイト刷新後も継続利用
「通信からデザインまで」を掲げ、幅広いビジネスを手がける株式会社ネットフォレスト。インターネットサービスプロバイダ(ISP)としてスタートし、ネットワークやサーバ構築などのインフラ事業から、ウェブサイト制作をはじめとするクリエイティブデザイン事業まで、トータルにカバーするIT企業だ。
「データセンターにおける通信系のサーバの管理、運用やお客様のサーバのホスティング、レンタルサーバ事業などを行うインフラ領域のエンジニアから、ウェブサイト制作を行うデザイナー、マーケターなどを擁している」と三上さんは話す。
CMSとしてのMT利用の歴史は古く「2009年頃よりソフトウェア版を利用してきた」とのこと。「サーバのホスティング事業を行うことから、ウェブサイト制作のクライアント先の企業にもソフトウェア版を提案している」ということだ。また、コーポレートサイトについては、「2013年頃にリニューアルを行ってから10年近く運用を続けてきた」と三上さんは話す。
「3年から5年スパンでの刷新が推奨される中、自社サイトの運用を10年近く続けてきたため、いろんな意味でモダナイズが必要だとの認識があった」という。たとえば、以前のサイトは「どちらかというと、マーケティングやウェブ制作の会社という内容が強かった」ということだ。実際には上述のとおり、老舗ISPとしてビジネスをスタートし、インフラ、ネットワークと幅広いビジネスを手がけているにもかかわらず、「事業の全体像が伝わる内容になっていなかった」という。
「当時は、データセンター事業については別にブランディングサイトがあり、お客様に自社ビジネスを説明する際に、サイトをまたいで説明しないといけない状態でした」(三上さん)。
そこで、データセンターのサイトを閉鎖してコーポレートサイトに統合、「外部から見て1つの会社であるにもかかわらずサイトが分かれている状況を改善し、サービス、事業全体像がわかるように刷新することが課題だった」と三上さんは説明する。
一方、デザイン面では、「統一的なコーポレートカラーを設定し、ブランディングを強化する」課題があった。龍川さんは「リニューアル前は赤が基調のデザインだった」と話す。「ネットフォレスト=森」ということで、グリーンを基調に、森のようにインターネットに必要な存在になろうとの思いを込めたかったと話す。
「森は、人間に必要な酸素を供給する場所だとの思いから、ネットフォレストは、インターネットにおける森のようにお客様から必要とされる会社になろうというテーマカラーを設定したいと考えた」ということだ。
さらに、サイト構造の面では、事業説明、ソリューション、ユースケースなど、ページ数を増やすことでSEO面も改善したいと考えたと龍川さんは話した。
多岐にわたる事業をいかに情報として整理するか、要件定義に時間をかけた
コーポレートサイトのCMSにMTを継続利用してきた理由について、三上さんは、「もともとサーバホスティング事業を行っていることもあり、サーバインストールして利用するソフトウェア版の利用は、弊社の事業とのシナジーは高い」と話す。
ホスティング単体で顧客企業に提案することはむしろ少なく、「改ざん検知やWAFなどのセキュリティソリューションやサービス、サーバの障害対応までをセットにし、さらにウェブサイト制作までトータルにカバーできるところを強みとしてビジネスを展開している」ということだ。
また、CMSとしてのMTの優位性について、三上さんは「セキュリティ面にある」と話す。「外部からどのCMSを使っているかが分からない形で構築しやすいのはアドバンテージだ」ということだ。
耐障害性の高さもポイントだ。「MTは動的にページを生成しない静的生成がメインになるので、万が一、MTに障害があってもサイトのページ表示には影響がない点もお客様にメリットを説明しやすい」と三上さんは話す。
さらに、龍川さんも、MT7から搭載された「コンテンツタイプ」によって「情報の管理、作成が容易になり、企業サイトとしても作りやすくなったため、お客様に提案しやすい」と話した。
コーポレートサイトのリニューアル2022年の6月頃からスタートし、2023年5月にカットオーバーした。リニューアルに際して注力した点について、三上さんは「事業やソリューションをどのようにコーポレートサイトで伝えていくか、サイトの要件定義のフェーズに時間をかけた」と説明する。
具体的には「事業紹介の部分で、インターネット事業としてデータセンター、ISPといったビジネスがあり、IaaSやCDNといったサービスを売るクラウド事業、さらにはサーバホスティング、ウェブデザインなど多岐にわたっている」点をうまく整理し、外部にどう見せていくかがポイントだった。
「実は社内の売上構成比でいうと、ホテル向けのインフォメーションシステムなど業種特化型のソリューション事業が大きいため、これを大きく見せたいという社内の声もあった」と三上さんは振り返る。しかし、コーポレートサイトの役割は「社内外に会社を知ってもらう、ビジネスを知ってもらうことにある」(三上さん)ことから、原点に立ち帰り、サービスサイトとの棲み分けなどの情報整理に時間をかけたということだ。
実際の構築は2022年冬から行われた。コンテンツについてもコーポレートサイトには伝えるべき情報が少なかった。そこで、サービスサイトからコンテンツを補い、また足りないページはゼロから文章を作った。さらにMTの管理画面についても、「MTAppjQuery」プラグインを使ってカスタマイズし、担当者の使い勝手を向上し、サイトの更新性を高めたと龍川さんは話した。
会社の全体像を伝えることができ「受注貢献」という役割を果たせるように
リニューアル後の効果は、「ビジネスの全体像を伝えることができるようになった点が大きい」と三上さんは話す。リニューアル前は、コーポレートサイトで会社のビジネスの全体像を見せることができなかった。このため、「たとえば名刺交換などで弊社を知った方がサイトに来訪しても、断片的な情報しか伝えることができなかったが、リニューアル後は、コーポレートサイトを見れば会社の事業の全体像を理解してもらえるようになった」ということだ。
これにより、「ネットワークやサーバ構築などのインフラ事業から、ウェブサイト制作をはじめとするクリエイティブデザイン事業まで、トータルにカバーできる点を生かし、アップセル、クロスセルにも貢献できるようになった」と三上さんは話す。実際にコーポレートサイトを見たお客様から「サイトのデザインがかっこよかったので問い合わせした」というような相談がきたという。三上さんは受注への貢献は、コーポレートサイトとしても長続きさせたい効果だと述べる。
龍川さんは、サイトリニューアルは会社をさらに認知してもらうチャンスだとし、今回はリニューアルを機に会社のロゴや、コーポレートカラーも変えたことから「社内の意識がだいぶ変わった」と話す。
自分の部署、ビジネスだけでなく、会社全体をみんなが意識してくれるようになったということだ。
オウンドメディアの充実やシックス・アパートとの協業の機会を増やしたい
今後の展望について、三上さんは「コーポレートサイトの拡張策として、オウンドメディアを準備中だ」と話した。日々情報を更新していく場所として、オウンドメディアを充実させていくことが今後のポイントだということだ。
コンテンツ案としては、たとえば、ウェブデザインに関するTIPSや、インターネット回線の選び方、社員の働き方やデスク周りのガジェット紹介など、身近なテーマをフックにして、自社のビジネス紹介につなげていくことを考えている。また、セキュリティ領域のテーマとして「SSLの鍵マークだけではフィッシングサイトを見破るのは難しいなどの動向、トレンドの話から、弊社が提供する認証周りのサービス紹介につなげるといったコンテンツも考えられる」と三上さんは話す。
龍川さんも、「事業の領域が広がっていく中で、コーポレートサイトとしてこれに追随することができた」と話した上で、「リニューアルによってコンテンツを増やしてSEOの改善を行ったが、この結果を見ながら、さらなる改善につなげていきたい」と話した。SEOの評価を高めるべく改善を重ね、さらに来訪者を増やし、受注貢献という役割を果たしていきたいということだ。
最後に、シックス・アパートに期待したい役割について、三上さんは「ネットフォレストがどのようにMTをお客様に提案しているか、そういった事例を紹介することでコラボレーションしていけたらと考えている」と三上さんは話す。さらに、「MT高速化のノウハウなどの技術的な部分でエンジニアがセミナーなどに登壇することで、MTの使い方などについて知見を共有し、ネットフォレストの事業を知ってもらう機会を持てたらと考えている」ということだ。
MTの機能面では、ウェブサイトのアクセシビリティ対応をより効率的に行うための「アクセシビリティチェック」機能など、SaaS型CMSの「MovableType.net」に搭載されている機能をソフトウェア版にも実装してほしいと龍川さんは話した。これにより「ホスティング事業をやっている会社としては、お客様にソフトウェア版をより提案しやすくなる」ということだ。
そして、2023年秋にリリースが予定されている MT8 へのバージョンアップも検討していていきたいと龍川さんは話す。 MT8 ではブロックエディタが刷新される(※)。同じフォーマットのコンテンツ作成を容易にし、コンテンツタイプだけでなく、従来の記事やウェブページでも利用可能であることから、関連記事や、関連する事業への紐付けがさらに容易になるだろうと龍川さんは締めくくった。
※ 2023年8月時点ではプラグインとして提供している「MTBlockEditor」が、Movable Type 8 より製品に同梱されます。
写真左からネットフォレストの龍川寿美子さん、三上晃弘さん
事例データ
- サイトURL: https://www.netforest.ad.jp/
- 使用した製品: Movable Type ソフトウェア版
- Movable Type の利用目的:セキュリティの高さや耐障害性が同社のホスティング事業、ウェブ制作事業と親和性が高いと判断。現在まで継続利用している
- どのような手ごたえがありましたか?:コーポレートサイト刷新後はビジネス全体像が伝わる内容に刷新され、さらにアップセル、クロスセルにも貢献できるようになった。