ERPパッケージの開発、販売を手がけるビジネスソリューション事業と、デジタルを基軸に企業のマーケティング活動支援するコミュニケーションデザイン事業を手がける株式会社オロ。アジアを中心にグローバルに展開する同社は、本社のコーポレートサイト刷新にあわせ、各現地法人のサイトを立ち上げ、CMSにはMovable Type(MT)をSaaS形式で利用できる「MovableType.net」(MT.net)が採用された。今回のサイト立ち上げについて、同社 グローバルビジネス支援に携わる石田真義さんと、ソフトウェアエンジニアの肥前洋佑さんにお話を伺った。
アジアに展開する現地法人のコーポレートサイトを立ち上げ
1999年に設立された株式会社オロは、積極的に海外展開を進めており、アジアを中心に、中国、台湾、香港、タイ、マレーシア、ベトナム、シンガポールに現地法人を設立。海外にオフィスを構えることで、オフショア開発や日本企業の海外進出の支援、海外のお客様に向けたPRやマーケティングを行うインバウンド事業などを手がけている。
特色のある取り組みとして、例えば、マレーシアでは現地の日系ショッピングセンターのイベントスペースを貸し切り、日本の物産展などを展開することもある。各国に根ざしたビジネスを行う同社にとって、このような取り組みをより周知させるためにも、現地法人ごとのコーポレートサイトの立ち上げが急務だった。
「対象となった現地法人は、ベトナム、マレーシア、タイ、そして台湾の4拠点です。ちょうど日本のコーポレートサイトのリニューアルのタイミングだったことに併せ、ある程度サイトのデザインを統一しようと考えました」(肥前さん)
本社のコーポレートサイトは、もともと MTソフトウェア版を使っていた。石田さんによれば「8、9年前からお付き合いがあり、自社サイトのCMSだけでなく、パートナーとして、お客様のサイト制作にも MT を活用してきた」とのことだ。
スピーディに構築ができ、運用の負荷が少ないサイト基盤としてSaaS形式が最適だった
サイト制作体制は、まず、基本的な枠組みとなるテンプレート設計、開発は日本側で行い、作成したテンプレートを各現地法人に配付。ベトナム法人の開発拠点にテンプレート開発機能が集約されているため、そこでテンプレートを集中的に制作し、サイトへのコンテンツの流し込みと、リリース後の日々の情報更新は各現地法人が行う体制となった。
「コンテンツの運用は現地法人が担当するので、極力、運用負荷を下げる工夫が必要でした。また、今後、拠点が増えて、コーポレートサイトを量産していったときに、サイトの保守、運用が煩雑にならないようにする必要もありました」(肥前さん)
そこで、SaaS形式で利用できる MT.net の採用が決定する。決め手となったのは、これまでの MT ソフトウェア版の採用実績と、本体サイトと同じテンプレートを複数拠点に展開する際に、最も適しているのがSaaS形式だという判断からだった。
また、各現地法人では、現地に進出したい日系企業や、現地のクライアント企業からサイト制作の相談を受ける場合もある。
「今回のコーポレートサイト立ち上げを足掛かりに、お客様からのさまざまなご要望に応えられるよう、スピーディに構築ができ、運用の負荷が少ないサイト基盤として、MT.net を使った提案を増やしていきたいという狙いもありました」(肥前さん)
全体の構築スケジュールは、まず、CMS選定が決まったのが2016年11月頃。ベトナムのサイト公開を最初に設定し、サイト設計、およびベースとなるテンプレート開発を約1カ月で行った。
テンプレートは、MT.net の標準デザインテーマである「Simple Product」をベースに、本社のコーポレートサイトのデザインを反映させた。そして、イニシャル分のコンテンツ制作を2016年12月に行い、年内での公開に間に合わせた。
「開発期間は、約2カ月間。短い時間でしたが、まずはベトナムをリリースし、細かい改修やコンテンツ拡充は、リリース後、毎月行っている状況です」(肥前さん)
ベトナム公開後は、残りの3ヵ国(マレーシア、タイ、台湾)のサイトを、2017年2月頃までに相次いで公開した。
個別の要望にも応えつつ、全体最適のバランスを取りやすいのが MT.net
短い開発期間での構築だったが、肥前氏は、注力ポイントについて「現地法人で継続してコンテンツ更新を行えるような仕組みづくり」を挙げる。
例えば、日々のコンテンツ運用のサポートとして、更新を担当する現地スタッフが閲覧するための操作マニュアルを作成した。
「オンラインマニュアルも MT.net を使って作成し、インターネット上に公開しました。ベーシック認証をかけ、スタッフだけが閲覧できるようになっています」(肥前さん)
マニュアルには、記事の投稿手順などが解説されている。管理画面も英語に対応しているため、基本的にマニュアルを読めば、問題なく現地でも使えるほど使い勝手は良いという。
また、サイトの多言語化については、現地語をデフォルトに、英語、日本語に対応することが基本線となる。どの言語に対応するかは各現地法人で決め、段階的に進めているそうだ。
そして、サイト公開による効果について、肥前氏は「効果測定はまだこれから」と述べながらも、「コーポレートサイト経由の問い合わせは徐々に来ている状況にある」と話してくれた。
公開後のコンテンツ更新頻度は、「だいたい平均で月1回ペースくらい」をベースにしているが、今後はコンテンツを拡充し、さらなるサイトの認知拡大と、アクセス増加をめざしていきたいということだ。
一方、モバイル最適化については、「標準テーマがレスポンシブ対応(※)だったため、特にこちらで考えることなくモバイル最適化されている」とのこと。
※ MovableType.net のベーステーマは、すべてレスポンシブデザインで設計され、スマートフォンに対応しています(テーマギャラリーはこちら)。
「レスポンシブ対応もそうですが、MT.net には、問い合わせフォームも標準で備わっており、便利な機能を標準で利用できるため、あまり経験がない人でも使いやすい点が大きな強みです」(肥前さん)
なお、サイト公開後は、現地側から、「スライドショーを入れて表現を見やすくしたい」などの個別の相談を受けることがあるという。肥前さんは、「ページの見せ方や管理画面の使い勝手について、随時、改善を進めていく一方で、今後、拠点拡大した場合の運用、管理を見据えて、基本的には例外的な個別対応をせず、標準化したい」と述べる。
「現地でテンプレートをいじらなくても、柔軟に見せ方を変えられるような仕組みを作っていきたいです。MT.net は、本社側と現地側の役割を明確に分けることができるので、全体最適と個別対応のバランスがとりやすいツールだと感じています」(肥前さん)
さらなる機能拡充と、データセンターのアジア展開にも期待
今後の展望について、肥前さんは、「台湾、タイの日本語対応が4月に完了し、安定稼働のフェーズに入ったばかり」と述べる。その上で、「更新頻度をできるだけ高めていくために、更新しやすいコンテンツ設計の見直しにも取り組んでいくことが課題」と言う。
一方、クライアント企業に対する制作案件については、「初期の導入コストが低い点というメリットを活かし、MT.net の提案比率を高めていきたいと考えています。そのために、MT.net には、例えば、大規模サイトとまでは言わなくとも、より高負荷にも耐えられるプランや、機能面ではData API(※)対応などに期待したいです」と述べた。
※ Data API: Movable Type ソフトウェア版/クラウド版に搭載されている、さまざまなプログラム言語から REST/JSON で Movable Type にアクセスし、データの取得や更新ができるAPI(Data API の詳細はこちら)。【追記】2018年12月19日 Data APIに対応しました。
石田さんは、「サービスとして利用できる」MT.net のメリットを強調する。
「あれもこれもできるというのは、裏を返せば、選択肢が多いゆえの大変さもあります。特に、海外では、大規模サイトは必要ないけど、スピーディにサイトを作りたいというニーズがあります。そうしたニーズに対し、サービスとして明確な選択肢が示せるのは大きなメリットです」(石田さん)
また、サイト制作は「作って終わり」ではない。特に運用フェーズにおけるアップデートは、カスタマイズを行うほど大変になる。こうしたサイトの保守、運用も、SaaS形式のCMSであればまったく気にする必要がない。
「MT.net は相当な頻度で機能をアップデートしてくれます。お客様案件では、細かい要望が出てくることがありますが、こうしたスピーディな機能拡張は、MT に対する信頼感につながります」(肥前さん)
「企業向けとして納得のいくクオリティのSaaS形式のCMSとして、今後もさらなる拡充をお願いしたいです。また、アジアにクライアントが集中している弊社では、データセンターの海外展開も気になるところです。シックス・アパートのアジア展開にも期待したいです」(石田さん)
同社の更なるグローバルなビジネス展開に、MT.net が大きな役割を果たしていくのは間違いなさそうだ。
写真左からオロ 石田真義さん、肥前洋佑さん
事例データ
- 使用した製品:MovableType.net
- サイトをオープンしたのは:2016年12月から2017年2月にかけて
- MovableType.net 採用の理由:各海外現地法人のコーポレートサイト立ち上げに伴い、現地スタッフによる情報更新の省力化を目的に
- どのような手ごたえがありましたか?:サイト公開後、コーポレートサイト経由の問い合わせがいくつか来ている。あまり経験のない更新担当者でも、すぐに使い方に習熟し、簡単に情報更新が行えている