オフィスビルなどの空調設備や、半導体、電子部品工場等のクリーンルーム、自動車の塗装システムの設計、施工の大手である株式会社大気社。同社は、国内の従業員約1,500名を対象としたWeb社内報の更新性を高め、担当者の作業負荷を軽減することなどを目的に、社内報サイトをCMS化した。CMSには Movable Type (以下、MT)をベースにCMS機能を強化した「MTCMS」が採用された。今回のリニューアルについて、同社管理本部の三田直樹さんと松山日出海さん、八田直美さんにお話を伺った。
担当者のページ更新の負荷軽減が課題
同社の社内報は1965年の創刊後、紙での発行を続け、2002年からは一部のコンテンツをイントラネット上で閲覧できるようWeb化された。その後しばらく、紙とWebの併存状態での発行が続いていた。
「2013年に、社内報のデザインとコンテンツの見直しを行い、Web社内報に一本化しました。それまでは、紙の社内報は経営方針や社員にじっくり考えてもらう問題提起型のコンテンツを中心に掲載し、Webには、会社の動向や社員の動き、趣味の紹介など、速報性やコミュニケーションの活性化を重視したコンテンツを掲載していました」(三田さん)
20〜24ページ立てのものを年4回発行する紙の社内報と、毎月更新のWebが並立していたため、月によっては両方制作する時期があった。その後、Webに統合されてからは随時更新となったものの、担当者のページ更新の負荷軽減は喫緊の課題だったといえる。
「従来は、オフィシャルサイトを担当するメンバー以外はHTMLに関する専門知識を持っていませんでした。社内報は企画から取材、執筆まですべて内製していますので、ページの更新作業を誰でもできるように標準化して負荷を軽減する必要がありました。また、紙の社内報に慣れた人に対しても、読みやすく分かりやすいWeb社内報にすべく、デザインや構成面を考える編集作業により力を注げる体制にしたかったのです」(三田さん)
機能要件に対する提案内容とWeb社内報の実績の豊富さが決め手に
Web社内報のCMS化はどのような経緯で進められたのだろうか。
「まずCMSありきということでなく、Web社内報の刷新について複数の制作会社にコンペに参加していただきました。ちょうどその頃、広報部門の社外の交流会に出席する機会があり、他の参加企業の方からWeb社内報刷新の事例について話を伺うことがありました。そのときの案件を担当されていたのがスカイアークさんだったということで、私たちのコンペにも参加していただくことにしました」(八田さん)
同社がコンペで提示した機能面での要件は3つあり、1つは「サイト内の記事検索機能」、2つ目が、社内報という記事の機密性を保つための「ブラウザーのページ印刷を制限する機能」。そして3つ目が、「更新担当者が容易に記事を更新できる機能」であった。
「スカイアークからは、更新を容易にする仕組みとして『MTCMS』が提示されました。その他、こちらの機能要件に対する提案内容やコスト、納期等を総合的に検討し、スカイアークに決めました。Web社内報の実績が多く、我々の細かい要望に対する提案内容もスピーディかつ豊富だったので、安心してお任せできそうだという信頼感がありました」(三田さん)
選定を経て、開発は2013年10月頃よりスタートする。2014年2月本稼働という短期間での開発となった。
「Webに詳しくない担当者でも容易に更新できるよう、ページのレイアウトパターンをテンプレートでたくさん用意していただきました。また、写真をワンクリックで拡大して見せられるモーダルウィンドウに対応していただくなど、個別にカスタマイズしていただいた機能もありますが、それでも開発は短期間で完了しました」(八田さん)
「バグなどが見つかったときにも、すぐに修正が完了できるものと時間がかかるものとを切り分け、課題リストを作って作業の進捗を可視化していただきました。どこに問題が残っているかを忘れることなく、スムーズにプロジェクトが進められたと思います」(三田さん)
企画や編集に費やす時間をより多く確保できるようになった
MTCMSの導入効果について、三田さんは次のように語る。
「MTCMSにより、3人の社内報担当者全員でページの更新が可能になり、更新作業を効率化できました。また、記事作成から公開までの時間が短縮されたため、企画や編集に費やす時間をより多く確保できるようになり、記事の更新頻度や質を高めていくことに力を注げるようになりました」(三田さん)
初めて使うMTCMSに戸惑いはなかったか、八田さんは以下のように語る。
「初めて使うツールということで、操作に戸惑うこともありますが、そのつどスカイアークにサポートしていただいています。従来のWeb社内報ではDreamweaverなどのツールを使っていましたので、デザインの自由度が高い反面、手間がかかっていました。リニューアル後は、MTCMSのテンプレートを利用するため、分かりやすく見せる工夫や、早く記事を更新することに注力するよう考え方を切り替え、だいぶ慣れてきました」(八田さん)
リニューアルサイトの本稼働前には、操作マニュアルをもとにスカイアークが操作手順の説明を行う機会を設け、本稼働後は電話やオンサイトでサポート対応をしている。「とにかく、困ったときは能勢さんに頼るという感じで」(八田さん)きめ細かいサポートを提供し、両者の信頼関係は良好のようだ。
また、社内報の各記事にはSNSのような「いいね!」ボタンが設置されるなど、読者とのコミュニケーションを図るよう工夫されている。
「たくさん『いいね!』がつくのは、部長さんのインタビューや、現場の紹介で、業務に関わる記事、社員の人となりが見える記事が好まれる傾向があります。また、グローバルに事業展開しているため、国内外で何が行われているかを知りたい、仕事の実体験などの会社の中での役立つ情報が知りたいというニーズも強いです」(八田さん)
今後は、例えば、記事が「参考になったか」を聞くアンケート機能やコメント機能といった双方向的な取り組みをさらに進めていきたいということだ。
構成の改善や多言語化など、さらなるコミュニケーション活性化ツールとして
今後のサイトの機能改善などの展望について、三田さんは「ページ構成の改善」というキーワードを挙げている。
「現状は、ブログのように最新記事から順に記事が表示され、社内報の記事が更新されるとイントラのTOPページに最新記事のお知らせが表示されます。しかし、最新記事が上部に表示されるだけでなく、1月号、2月号というように月ごとの区切りがあるページ構成がよいという声もあります」(三田さん)
CMS化により記事の更新タイミングが増え、様々な記事が更新されたため、どれが今月公開した記事なのかが分かりにくいという声があり、そうしたページ構成の検討、改善をスカイアークとともに進めていきたいということだ。
「毎日のように社内報を見にいく人だけでなく、更新されたら見にいく人や、普段あまり見にいかない人が見ても、今回更新された最新記事はこれだというのが、ページを遡らなくてもわかりやすく見せたいですね」(松山さん)
「社内報を入口として、社員を知ることや、会社がこれまで蓄積してきた技術を知るというように、一種のアーカイブとして社内報が機能すれば、さらに社内報に関心を持ってもらえて、社員同士のコミュニケーションの活性化に寄与することができるかもしれません」(八田さん)
最後に、Web社内報や同社の事業に対して、今後、スカイアークやMTに期待することについてコメントをいただいた。
「スカイアークさんには、これからも安定運用できるよう、細かい機能面の改善などにご協力をいただきたいです。MTについては、私たちのようなユーザーが便利に使える機能を、今後もどんどん増やして、より使いやすいシステムにしていって欲しいですね。私たちと同じような課題を持った他社事例などがあれば、どんどん共有していただく機会があれば嬉しいです」(松山さん)
今後も、さらなる社員のコミュニケーション活性化に向け、同社のWeb社内報は新たな機能や改修を積み重ねていく。MTとスカイアークに求められる役割はますます大きくなっていくに違いない。
写真左からスカイアークの平栗健太郎さん、能勢弘光さん、
大気社の三田直樹さん、松山日出海さん、八田直美さん
事例データ
- 使用されたソフトウェア・サービス:MTCMS(Movable Type)
- 社内報をリニューアルしたのは:2014年2月
- リニューアルの理由:デザイン刷新と更新担当者の作業負荷軽減を目的として
- 制作を担当したのは:株式会社スカイアーク
- どのような手ごたえがありましたか?:ページ更新が容易になり、省力化・効率化できたことで、企画や編集に費やす時間をより多く確保でき、記事の更新頻度や質を高めていくことに注力できるようになった