2006年3月に旧伊奈町、旧谷和原村が合併し誕生したつくばみらい市。同市で地域福祉の推進に取り組む社会福祉法人 つくばみらい市 社会福祉協議会では、活動内容等の告知や報告を行う公式サイトのリニューアルに着手。サイト運営基盤には Movable Type(MT)を低価格かつ高い自由度で利用できるウェブサービス型の「MovableType.net」が採用された。自治体サイト向けの新テーマ「Public Organization」の開発プロジェクトを兼ねたリニューアルの詳細について、同協議会の安楽賢一朗さん、更新を担当するボランティアスタッフの古谷演子(ひろこ)さんにお話を伺った。
誰でも簡単に情報が更新できる仕組みの整備が課題
つくばみらい市 社会福祉協議会の公式サイトは、合併前の旧谷和原村時代にボランティアの学生が協力して立ち上げられ、その後、2006年の合併により、つくばみらい市が誕生し、つくばみらい市に引き継がれた。安楽さんは以下のように語る。
「リニューアル前は情報を頻繁に更新しづらい状況だったため、社会福祉協議会の取り組みを伝えていくために、情報の更新性には課題を感じていました」(安楽さん)
ウェブサイトの更新は、ボランティアスタッフの中でパソコンの操作に慣れたスタッフが担当しており、古谷さんは、約2年前から更新を担当している。
「社協が指定管理者として運営する『きらくやま ふれあいの丘』にある、こどもひろばのイベントカレンダーを毎月更新しています。また、市の広報誌の『社協だより』が2カ月に1回発行されるタイミングでも情報更新を行います」(古谷さん)
今回のリニューアルまでは、情報更新の際は、ホームページ作成ソフト(ホームページビルダー)を用い、事務所内にあるソフトがインストールされたパソコンから行っていた。
「操作がわかる古谷さんしかページ更新ができないため、専門のスキルがなくても簡単に更新できる仕組みが必要でした」と安楽さんは説明する。更新性を見直したいと感じたのは、ちょうど、新しく造成した「みらい平地区」に都内などから若いファミリー層が数多く移住してきた時期でもあった。
「これまで施設の利用者は高齢者の方が多く、そもそもホームページを見る人が少なかったのですが、みらい平地区ができ、パソコンやスマホになじんだ若い世代が増え、ホームページを通じた情報発信の重要性が高まってきたんです」(安楽さん)
自治体向けのテーマ「Public Organization」のモデルケースとして導入
今回のリニューアルプロジェクトでは、シックス・アパートみずから「MovableType.net」の導入を提案している。「MovableType.net」には、簡単にサイト構築、利用ができるよう、スマートフォンからのアクセスにも最適化されたレスポンシブデザイン対応のテンプレートが数多く用意されている。
そのうち、自治体をはじめとするアクセシビリティを重視したサイト向けのテーマ「Public Organization」の開発と並行して行われるプロジェクトと位置づけられたためだ。プロジェクトを担当したシックス・アパートの早瀬将一は以下のように語る。
「『Public Organization』の開発に取り組むにあたり、実際に自治体のウェブサイトに導入し、導入を通じて得られた知見を活かしたいと考えました。そこで、社会福祉協議会様にウェブサイトのリニューアルと合わせて提案し、並行してテーマ開発を行う承諾をいただきました。そしてその成果を、2016年6月下旬に行われた、Movable Type のユーザーグループによるWeb制作者・開発者向けのイベント『MTDDC Meetup TOHOKU 2016』で発表させていただくことになったんです」(早瀬)
もともと、早瀬がつくばみらい市の住民で、「きらくやま ふれあいの丘」などの施設を利用する機会が多かったものの、施設やイベントに関する情報が少ない点に課題を感じていたことも、提案の契機となった。
「『社協だより』が2カ月に1回ポスティングされるものの、とくに新興住宅地であるみらい平地区の住民は、地元のことを知らない人が多いと感じていました。若い世代はネットやスマホに親和性が高いため、社会福祉協議会のウェブサイトをリニューアルすれば見てもらえる機会が増えると考え、提案させていただきました」(早瀬)
提案は、2016年5月頃、サイトのリニューアルオープンは6月半ば頃と、スピード感を持って進められた。テーマ開発で注力した点について早瀬は以下のように語る。
「サイト設計、開発と並行してテーマに必要な要素は何かを考えました。注力したのは、運用担当者が極力テンプレートを触ることなくページやメニューを追加、削除することができるように、カスタムフィールドを使って管理性を高めた点です」(早瀬)
「Public Organization」以外のテーマは、どちらかというと、制作会社がカスタマイズのベースとして利用できるよう自由度が高く設計されている。
これに対し、「Public Organization」は構築と運用を明確に分け、運用担当者はページテンプレートを直接編集することなく、メイン画像の差し替え、アイテムの画像の編集などの情報更新、ページの編集が行えるように配慮されているのだ。
一方、サイトのリニューアルは、シックス・アパート側で設計、デザインしたページを社会福祉協議会側でレビュー、構造や内容のチェックを行う形で進められた。
「デザインもしっかり作り込まれていて、記事ページからのSNSへのリンクボタンの配置など、細かい点まで配慮して作っていただいたので、デザイン面での要望はとくにありませんでした。公開の前に、操作マニュアルも作成していただいたのですが、ホームページビルダーとは違って、我々が普段使うWordなどのような慣れ親しんだ画面で、直感的な操作でコンテンツを編集、公開できるので、これなら自分にもできるなと思いました」(安楽さん)
MTの使い勝手の良さと、ウェブサービスとしての「MovableType.net」のスピード感が遺憾なく発揮されたといえる。
リニューアルから1カ月で月間PVは約5倍に! スマートフォンからのアクセスも増加
リニューアルしたサイトが公開されてから約1カ月が経過し、安楽さんは「以前はホームページビルダーがインストールされたパソコンでなければ更新作業ができなかったけれど、今後は各担当者にアカウント発行し、マニュアルに従えば、誰でもリアルタイムに更新できる体制になった」と語る。安楽さん自身も、公開後の情報を確認し、気づいたところはチェック、修正することがあるそうだ。
また、アクセス数は、リニューアル前は年間1万4,000〜1万5,000PVほどだったのが、リニューアル後1カ月で、月間5000〜6000PVと約5倍に伸びている。また、モバイル(スマートフォン)からのアクセスがデスクトップを上回っており、当初の目論み通り、子育て世代を中心とした若い世代に見られていることが推測される。
使い勝手について、古谷さんは「スキルがないスタッフでも簡単に操作できるので、これからさらに更新に携わる担当者が増えていくといいと思う」と展望を述べた。
「MovableType.net」のサポートは、無料で受けられるメールサポートが標準で備わっている。「操作して、何か不具合が生じたらどうしようと、利用に二の足を踏む職員もいたが、リニューアル後は、使いやすくなったことに加え、サポートも受けられるので、以前の体制より安心して利用することができる」と安楽さんは導入効果を口にした。
有事の際のボランティアスタッフの連絡手段として、さらに活用していきたい
今後の展望として、安楽さんは「ボランティア募集に関する告知や、災害時の情報などを迅速に伝えていくこと」をポイントに挙げる。
「『災害ボランティア登録制度』という仕組みを作ることを考えています。これは、市民の方を対象に、災害時にボランティアセンターの立ち上げや、県内外からくるボランティアの受け入れ、避難所での炊き出し、支援物資の搬入、仕分けなどを行う支援スタッフを、あらかじめ募集、登録する仕組みです」(安楽さん)
こうした有事の際にページを立ち上げ、連絡手段として活用することも「MovableType.net」により迅速に行うことができるのではないかと期待しているという。
今後は、「さらに多くの市民に社協の取り組みを知ってもらいたい」と安楽さんは話す。そして、今後、シックス・アパートに期待することを次のように総括した。
「リニューアルについては、使い勝手が良くなり、非常に満足しています。今後は、上述したような新しい取り組みの際に必要な技術や活用方法などを適宜アドバイスいただきたいです」(安楽さん)
社会福祉協議会の取り組みを多くの市民に知っていただくために、今後も「MovableType.net」に求められる役割はますます増えていくに違いない。
写真左から古谷演子さん、安楽賢一朗さん、シックス・アパート早瀬将一
事例データ
- 使用した製品:MovableType.net
- ウェブサイトURL: https://www2.tm-shakyo.jp/
- ウェブサイトをリニューアルしたのは:2016年6月
- CMSを導入した理由:シックス・アパートの提案から、課題だった更新性の向上が期待できると感じたため
- どのような手ごたえがありましたか?:使い勝手がよくなり、専門的なスキルがなくても情報の更新が容易に行えるようになった。また、スマートフォンに最適化したことで、モバイルデバイスからのアクセスがデスクトップを上回っている